QLOOKアクセス解析

momoな毎日

古いカルト映画から最新アクション、海外ドラマまでいろいろレビューしています。好物はオカルト、サイコ、殺人鬼、吸血鬼、廃病院、エイリアン、人魚、ローマ時代などなど。結果的にホラーものが増殖中。

このブログは引っ越しました。
http://momo-rex.com
個別ページは3秒後に移転先に自動転送されます。ビックリしないで・・・

移転先新着記事


カテゴリ別記事一覧

スポンサーサイト

Posted by momorex on  

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『レザボア・ドッグス』(1992) - Reservoir Dogs -

Posted by momorex on   2  0

代表作の一つ『パルプ・フィクション(1994)』へと続くタランティーノ監督のデビュー作。
拳を繰り出す方が早いような男達が延々とくだらないおしゃべりを続け、くだらない事で小学生のような口喧嘩を始めてはたしなめられる。そしてその後唐突にバイオレンスに突入するという、監督独特の(男の)世界が繰り広げられる。

このレビューは是非この曲「リトル・グリーン・バッグ」を流しながらお読みください。

■レザボア・ドッグス - Reservoir Dogs -■ 1992年/アメリカ/100分
 監督 :クエンティン・タランティーノ
 脚本 :クエンティン・タランティーノ
 製作 :ローレンス・ベンダー
 製作総指揮:リチャード・N・グラッドスタイン他
 撮影 :アンジェイ・セクラ
 音楽 :カリン・ラクトマン
 主題歌:ジョージ・ベイカー「リトル・グリーン・バッグ」
 出演 :ハーヴェイ・カイテル  (ホワイト/ラリー・ディミック)
     ティム・ロス  (オレンジ/フレディ・ニューエンダイク)
     マイケル・マドセン   (ブロンド/ヴィック・ベガ)
     スティーヴ・ブシェミ  (ピンク)
     エディ・バンカー    (ブルー)
     クエンティン・タランティーノ(ブラウン)
     クリス・ペン      (ナイスガイ・エディ・キャボット)
     ローレンス・ティアニー (ジョー・キャボット)
     カーク・バルツ     (マーヴィン・ナッシュ)


解説:
宝石店襲撃に失敗した強盗たちの確執をタイトに描いた傑作バイオレンス・アクション。描きこまれたキャラクター、縦横無尽に時間軸を越えた構成、緩急自在の演出とどれもが素晴らしく、脚本・監督(おまけに出演も)の異才タランティーノの名を一躍世に知らしめた。トップ・シーンからエンディングまで、トップノッチで突っ走る。
 (allcinema)

あらすじ:
キャボット親子の元に集められたその道のプロの男達6人。お互い本名も素性も知らないままに銀行強盗を決行するが、情報は警察に筒抜けになっており死傷者が出る。果たして誰が警察のイヌなのか?-

Reservoir Dogs:「掃き溜めの犬たち」の意



Reservoir Dogs_92黒いスーツを身にまとい、小さなレストランのテーブルで雑談する男達。朝日のよく当たる席で男達がおしゃべりしている内容はというと、マドンナのデビュー曲「ライク・ア・ヴァージン」の奇想天外な解釈(Mr.ブラウン)だったり、ウェイトレスに渡すチップについての講釈(Mr.ピンク)だったり、、。
『パルプ・フィクション』の冒頭を彷彿とさせるこのレストランでのくだらない会話には、もちろん意味など無い。これらは登場人物の紹介にあたる。
後にマドンナからタランティーノにクレームが入ったという独特の解釈をたれたMr.ブラウンは、頭の中がちょっとどちらかに偏っている、あまり近づきたくないイメージだし、理由の無い無駄な金は1セントたりとも出したくないというMr.ピンクは現実的で利己的、ようするにKYな感じ。そして彼らの話をうまく聞いては会話を流していくMr.ホワイトは人間関係を大事にするリーダー的なタイプに見える。
(オレンジ、ブロンド、ブルー3人はあまり話さないので、ここではあまりその人となりが分かりづらいが。)

Reservoir Dogs_12このくだらないおしゃべりや痴話喧嘩は、移動する車の中やボスであるジョーが「色」の渾名を決めるときにさえ続けられ、本作はバイオレンスに分類される作品でありながら「会話」で成り立っていることが分かる。

レストランで軽口をたたき合った後、まるで幼稚園の入学式の行列のようになって向かった先には停めてある数台の車。この車に分乗して向かうのは宝石屋。彼らは久しぶりに集まった昔からの仲間でもなんでもない。彼らは犯罪者。
そして、ここからいきなりバイオレンスになる。

腹を撃たれのたうつオレンジを集合場所に運ぶホワイト。ここでも会話は大事だ。重傷のオレンジの気を失わせまいとずっとしゃべり続けるホワイト。宝石を盗み出せたものの死傷者が出て、強盗は半ば失敗に終わった。集合場所に命からがらたどり着いたピンクの話によると、「警官が宝石店の中にたくさん待機していた。警察のイヌ=裏切り者が仲間に紛れ込んでいる!」
「盗るもの盗ってさっさとズラかればよかったものを、あの殺戮マシーン“ブロンド”が派手に銃を撃ち始めたものだから、ひどい銃撃戦になってしまったんだ!」
Reservoir Dogs_01叫ぶピンク。オレンジは血の海に横たわっている。瀕死のオレンジを介抱しながら事態を飲み込もうとするホワイト。集合場所になかなか姿を見せないボス親子。そこへやって来たのが警官を一人人質にして連れてきた殺戮マシーン“ブロンド”。誰が裏切り者なのかをこいつから聞き出そうと言う。賛成するピンクとホワイト。
いったい、誰が警察のイヌなんだ?
誰のせいで俺たちはこんな目にあったんだ


Reservoir Dogs_95お互い命を預けての強盗計画のはずなのに、あっという間に仲間割れして収集がつかなくなっていく「掃き溜めの犬たち」。冒頭ののんびりした、くだらないおしゃべりの空気は一変、互いの本名も素性も知らない者同士が互いに疑い、銃を向け合う。
本作は時間軸も行ったり来たりするので、そんな緊迫した中に、強盗前ののんびりした余裕のある彼らの様子が挟まる。軽口をたたく人のいい男のように見えるホワイトさえも、銃を構えるその姿は堂に入り、ピタッとあった銃口には狂いが無い。そう、彼らは犯罪者と警察のイヌ。「Reservoir Dogs」だ。

そして最後は犯罪者らしく、おしゃべりではなく「銃」で会話しThe End-。




犯罪者の自滅を描く本作だが、登場人物達はいちいちかっこいい
ハーヴェイ・カイテルは後の『パルプ・フィクション』の掃除屋を思わせる冷静さだし、スティーヴ・ブシェミもまだ若い。マイケル・マドセンの大きな身体を揺らせて踊るシーンは不気味なコワカワ(怖くて可愛い)で、ジョーの息子エディ(クリス・ペン)は駄目な2代目かと思いきや、洞察力に優れた出来るヤツ。
Reservoir Dogs_11そしてティム・ロス
殺し屋たちの挽歌(1984)』でチンピラを演じた彼だが、本作では準主役のMr.オレンジを務めその名を世間に知らしめた。
オレンジのかっこいいシーンが一つあるんだけど、何度観ても何回観てもシビレる(死語
とはいえ、やはり彼らは犯罪者。タランティーノはきっちり最後には落とし前をつけてます。


監督クエンティン・タランティーノ
Django_27sアメリカ合衆国の映画監督。
1990年代前半、入り組んだプロットと犯罪と暴力の姿を描いた作品で一躍脚光を浴びた。脚本も書き、自身の作品に俳優として出演もする。アカデミー脚本賞とカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞している。
タランティーノの作風は、自身の映画趣味が随所に見受けられる。パロディ・オマージュ・引用のほか、千葉真一(Sonny chiba)やパム・グリアなどタランティーノが熱狂的なファンである俳優を出演させている。
日本映画に造詣があり、脚本を担当した映画『トゥルー・ロマンス』でも、主人公のサブカルチャー・ショップの店員が「Sonny chibaの空手映画のファン」という設定にしている。『パルプ・フィクション』では、ブルース・ウィリスに日本刀での殺陣を行わせた。
映画製作に携わるようになって以降も、いちファンとしての映画鑑賞意欲は衰えず、毎年数多くの映画を視聴している。気に入った映画には声を大にして賞賛を送り、またそれらを自分の中でランク付けすることを趣味としている。クエンティン・タランティーノの映画ランキング

■主な作品
 ・レザボア・ドッグス(1992) -Reservoir Dogs
 ・トゥルー・ロマンス(1993) -True Romance ※脚本
 ・パルプ・フィクション(1994) -Pulp Fiction
 ・ナチュラル・ボーン・キラーズ(1994) -Natural Born Killers ※原案
 ・フォー・ルームス(1995) -Four Rooms ※4話目脚本
 ・フロム・ダスク・ティル・ドーン(1995) -From Dusk Till Dawn ※脚本
 ・ジャッキー・ブラウン(1997) -Jackie Brown
 ・キル・ビル Vol.1(2003) -Kill Bill: Vol. 1
 ・キル・ビル Vol.2(2004) -Kill Bill: Vol. 2
 ・デス・プルーフ in グラインドハウス(2007) -Grindhouse
 ・イングロリアス・バスターズ(2009) -Inglorious Bastards
 ・ジャンゴ 繋がれざる者(2012) -Django Unchained


(Wiki:クエンティン・タランティーノ)


こうしてみると、最初の3作がとりわけ好きだなー。
映画館で観た『イングロリアス・バスターズ』も小気味が良くて笑わせてもらった。
『ジャンゴ 繋がれざる者』は今年3月1日にようやく公開。ぜひ観に行きたい!
DjangoUnchained_facebook1 公式サイト:ジャンゴ 繋がれざる者

最近、「タランティーノ、引退か?」みたいな記事を見たけれど、そんなこと言わないで、ぜひこれからも撮ってほしい。
ではまた

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ blogramのブログランキング

関連記事
スポンサーサイト

『マンク ~破戒僧~』(2011) - Le moine -

Posted by momorex on   0  0

厳しい戒律の下、自己をこれでもかと抑え込み、神の僕として暮らす修道士。そんな中でも彼は生まれてすぐから修道院で育ち一般の世界を経験したことが無い清廉な神の僕。その彼が悪魔のような女に魅入られたことから、彼の世界のすべてが変わっていく。
本作は、発表当時激しい非難を浴びながらもサド、ホフマンからブルトンに至る異貌の作家たちの賛辞によって一世を風靡した、異才マシュー・G・ルイスが若干19歳にして書きあげた「マンク」が原作。

Le moine_00■マンク ~破戒僧~ - Le moine -■
2011年/フランス・スペイン/101分
 監督   :ドミニク・モル
 脚本   :ドミニク・モル、アンヌ=ルイーセ・トリヴィディク
 原作   :マシュー・グレゴリー・ルイス「マンク」
 製作   :ミシェル・サンジャン
 製作総指揮:ピラール・ベニート、アルバロ・ロンゴリア
 撮影   :パトリック・ブロシェ
 音楽   :アルベルト・イグレシアス
 出演   :ヴァンサン・カッセル  (アンブロシオ)
       デボラ・フランソワ   (バレリオ)
       ジョセフィーヌ・ジャピ (アントニエ)
       カトリーヌ・ムシェ   (エルバイラ)
       セルジ・ロペス
       ジェラルディン・チャップリン

解説:
聖職者たる修道僧が色欲から殺人まであらゆる戒律を破るという背徳的な内容から、長らく禁書扱いされていたというマシュー・G・ルイスのゴシック小説「モンク」を、「ハリー、見知らぬ友人」のD・モル監督が映画化した衝撃のスリラー。「ブラック・スワン」のV・カッセルが悪魔の誘惑に膝を屈する破戒僧を熱演するほか、「譜めくりの女」のD・フランソワが悪魔の化身のような美女を蠱惑的に演じ、強い印象を残した。
 (WOWOW)

あらすじ:
17世紀スペイン・マドリード。修道院の前に捨てられていた赤ん坊アンブロシオは修道僧達に育てられ、やがて清廉な修道士として成長し、地域の人々の尊敬を集めていた。
そんなある日、火事で両親を亡くし、自身も酷い火傷を負ったためマスクで顔を覆った少年バレリオが見習い修道士として入門を求めてくる。体力的に無理だろうと反対する修道士達の中、アンブロシオは寛容の心を持ってバレリオを迎え入れる。
だがある夜、バレリオはアンブロシオに衝撃の告白を始める-





Le moine_06善は善、悪は悪、黒は黒、白は白。
ある意味融通の利かないとも言える、しっかりとした信念の元に生きる修道士アンブロシオ。そんな彼の説教は尊大であり雄弁。聞く者への説得力に疑いの欠片はみじんも無く、多くの人が彼の説教を聞きに修道院へやって来る。
しかし彼には出生の謎があり、嵐の夜に人知れず修道院の門の前に捨てられていたのを修道士達に育てられ、今に至る。生まれてからずっとこの隔絶された世界に生きてきたアンブロシオは、神に最も近いとも言える修道士となった。

Le moine_05その日も多くの人々が彼の説教を聞くため集まってきたが、その中に2人の少女がいた。1人は邪な目つきで彼を眺め、もう1人はその説教の素晴らしさに気を失うほどの無垢な少女だった。

そんなある日、叔父と称する男に連れられ1人の少年が修道院の門をたたく。この少年バレリオは家が火事にあい両親を亡くした上、酷い火傷を負ったためマスクで顔を覆っていたが、見習い修道士として入門したいと言う。厳しい戒律の下では彼の体力が保たないのではと修道士達は意見したが、アンブロシオは彼の心を癒やす手伝いになるのではと寛容の気持ちで彼を迎え入れる。
ちょうど同じ頃、アンブロシオが師と仰ぐ老修道士が病の床で「彼がやって来た。悪魔が近くを彷徨いている」という謎の言葉とともに息を引き取った。

Le moine_02そんなある夜、持病の頭痛に苦しむアンブロシオに音も無く近づいてきたバレリオ。アンブロシオの頭を両手で包むことで頭痛を治してしまったバレリオに驚くアンブロシオ。そんなアンブロシオにバレリオはマスクを外して告白を始める。
それを聞き、バレリオの秘密を知ったちょうどその時、清廉な僧アンブロシオに1本の矢が放たれ、生まれてすぐから培ってきた修道士アンブロシオの全てがガラガラと音を立てて崩れ始めていく-



不気味な森、古い修道院、出没する幽霊、何度も見る同じ夢、汚れなき乙女とマスクの少年。
ゴシックものとしての舞台は十分すぎるほどに揃っている。そこに悪魔の手に落ちた僧の情欲、黒魔術、近親相姦、殺人、、。原作が160年間禁書になっていたのも頷ける内容だ。

原作者マシュー・グレゴリー・ルイス
Matthew_Gregory_Lewisイギリスの小説家、劇作家。1775年ロンドン生まれ。
ゴシック小説の代表的な作品の一つとされる『マンク』などで知られ、「マンク・ルイス」とも呼ばれた。
オックスフォード大学卒業後、1794年にオランダのデン・ハーグのイギリス大使館に勤め、ここには数か月滞在しただけだったが、この間の10週間で『マンク』Ambrosio, or the Monkを書き上げた。これは翌年の夏に発行され、その背徳性と残虐さで大きな非難を浴びたが、ルイスをたちまち有名人にした。『マンク』にどのような倫理的または美的な欠点があったにしろ、ルイスは世間で大いに受け入れられ、社交界の花形となる。

1816年夏に、ジュネーヴ滞在中のバイロン、パーシー・ビッシュ・シェリー、メアリー・シェリー、ジョン・ポリドリを訪問して、5つの怪談について詳しく話したことが、シェリーの8月18日から始まる日記(Journal at Geneva (including ghost stories) and on return to England, 1816)に記されている。(「ディオダディ荘の怪奇談義」には参加していないと見られる)  (Wiki:マシュー・グレゴリー・ルイス)



オフィシャルサイトによるとこの原作の完全映画化とあるが、不気味なゴシック設定を見せるのに時間を取り過ぎて、肝心の主役アンブロシオが何故、どうやって背徳の世界に墜ちていったかというのが少しわかりにくい。また少年バレリオの意図も掴みづらく、見終わった後、あれこれと自分で補完しなくてはならない作業が待っている。
それと邦題の「破戒僧」。意味は「戒律を破った僧侶」のことだそうだが、その「はかい」のインパクトから暴れ回る僧侶の話かと想像していた(のは自分だけかも)。もうちょっと情緒のあるサブタイトルが欲しかったところ。

Le moine_01それにしても本作で一番怖かったのは、ゴシック描写でも破戒僧でも結末でもない。
修道院繋がりで尼僧達が出てくるんだけども、1人の若い尼僧が恋人の子を孕んでしまったのが他の尼僧達にばれて、冷たい石の部屋に閉じ込められた上、水も食べ物ももらえずにお腹の子共々死んでしまったこと(見殺し)。こっちの破壊力の方がよっぽど大きかった。

こういう作品を観ると、つい原作が読みたくなるなー。
ではまた





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ blogramのブログランキング

関連記事

『ロスト・ハイウェイ』(1997) - Lost Highway -

Posted by momorex on   9  0

究極のストレスにさらされた男がハイウェイをひた走る。
延々と続くライトに照らされた地獄への道。そこで男が見たものとは、現実なのか、妄想なのか。

Lost Highway_00
■ロスト・ハイウェイ - Lost Highway -■
1997年/アメリカ・フランス/135分
 監督   :デヴィッド・リンチ
 脚本   :デヴィッド・リンチ、バリー・ギフォード
 製作   :ディーパック・ネイヤー他
 撮影   :ピーター・デミング
 音楽   :アンジェロ・バダラメンティ他
 主題歌  :デイヴィッド・ボウイ “I'm Derranged”
 出演   :ビル・プルマン    (フレッド・マディソン)
       パトリシア・アークエット(レネエ/アリス)
       バルサザール・ゲティ (ピート)
       ロバート・ロッジア  (Mr.エディ/ディック・ロラント)
       ロバート・ブレイク  (白塗りの男)
       リチャード・プライヤー(アーニー)
       ゲイリー・ビジー   (ピートの父親)
       ジャック・ナンス

解説:
自身が製作総指揮したTVドラマを映画化した「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」から4年の沈黙を破ってリンチ監督が放った、同監督らしい悪夢ムードにあふれる不条理スリラー。先が読めない物語、刺激的な映像とサウンド(知る人ぞ知る豪華メンバーが担当)の演出など、観客の感性に挑戦し続けるリンチ・ワールド。本作は集大成という声も高い、ファンならずとも必見の1本だ。出演は「インデペンデンス・デイ」のB・プルマン、TV「ミディアム 霊能者アリソン・デュボア」のP・アークエット。
 (WOWOW)

あらすじ:
サックス奏者フレッドはある朝、インターホン越しに“ディック・ロラントは死んだ”という奇妙な男の声を聞く。その翌日からフレッドとレネエ夫婦宅の玄関先に、送り主不明のビデオテープが毎日1本届くようになる。1本目は夫妻の自宅の外観が、2本目には家の中までカメラが入り夫婦の寝姿が撮られており、あわてて警察に連絡する2人。しかしその翌日届けられた3本目には、妻を殺害し、その血で真っ赤になっている夫フレッドの姿が映っているのだった-





ブルーベルベット(1986年)、ワイルド・アット・ハート(1990年)、ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間(1992年)と、比較的わかりやすい作品が続いた後に、きました..ドーンとっ、デヴィッド・リンチ監督作の神髄がっ
この作品は、ある男の狂気の行方を追っていきます。行き先は不明です。

序章
サックス奏者フレッド。音楽の仕事は波に乗り、美しい妻もいる彼は順調な人生を歩んでいるかのように見えた。そんなある朝、苦悩に落ち込み、疲れ切った様子のフレッドが自宅にいるとチャイムが鳴る。インターホンに出た彼の耳に飛び込んできた男の声。
 “ディック・ロラントは死んだ”

フレッドとレネエ
Lost Highway_09この翌日から彼の自宅にビデオテープが届くようになる。それは玄関前の階段に投げ捨てられるように封筒に入れて置かれていた。美しい妻のレネエは気味悪がったが2人で見てみることにしたフレッド。内容は彼らの自宅を外からほんの数秒映されているというものだった。
不動産屋が置いていったのかと気にもしなかった2人だが、翌日届けられたものは、家の中を廊下、リビングから寝室までカメラが入り、2人がぐっすり寝ているところが映されていた。
あわてて警察に連絡した2人。進入経路は分からなかったが捜査を約束してもらい一安心する2人。
しかしその後もビデオテープは届き、3本目を1人で確認したフレッド。
その内容は、妻を殺害、ばらばらにして血の海に座り込んでいる自分の姿だった。
そして逮捕、裁判が行われ、フレッドは死刑が宣告された。独房で頭痛を訴えるフレッドだったが、ある日、看守が独房を確認すると、なんとそこにいたのはフレッドではない見知らぬ若者だった-


本作前編はフレッドとレネエ夫婦の物語。基本は2人のやりとりが続くが、時折はさまるフレッド1人の行動。作品冒頭がまずフレッド1人。疲れ切って放心したようにタバコを吸っているフレッドのアップで始まる。そこにインターホンの奇妙な台詞“ディック・ロラントは死んだ”。これを聞いて驚きもしないフレッドにこちらが驚き、映画が始まってほんの数分で「出たー、リンチだー」と思ったのは言うまでも無い..。
Lost Highway_02そして美しい妻レネエ登場。彼女をおいて仕事に出たフレッドは自宅に仕事先から電話をかけるが、家にいるはずの妻が出ない。なぜ、こんなことを?まるで何かを疑っているかのような行動をとる夫。
2人でパーティに出席しても、妻と他の男の様子が気になって仕方が無い夫フレッド。どうやら妻の浮気を疑っているらしい。そんなストレスもあってか、妻を満足させられないと思い込んでいる夫は、ますます疑心暗鬼の世界に追い込まれていく。
そんな時に届き始めたビデオテープ。1本目、2本目と2人で見た後警察に連絡。刑事に何か心当たりは?と質問されるが、フレッドの返した言葉は奇妙なものだった。
 “起こったとおり記憶したくない(ので、何も覚えていない)”

おっと-!フレッド視点で進んでいくこの物語の主人公フレッドが“起こったとおり記憶したくない”だと?ということは、、今までもこれからも起こる(起きた)ことは事実ではないかもしれないということなのか..

Lost Highway_05パーティでは奇妙な白塗りの男が話しかけてくる。自分はここ(パーティ会場)にいるが、今、フレッドの家にもいると言う。自宅に電話をかけると確かにその男が電話口に。しかしこの奇妙な出来事はフレッドの少し驚く顔だけにとどまり終わる。。
そして妻ばらばらビデオを1人で見たフレッド(当たり前か)。いったん手に入れたものの、一番残酷な方法で手からずるりと落ちていった美しく大事なもの。
逮捕、死刑が宣告され独房にいた彼は、ある日他の若者に入れ替わる。
フレッド、どこ行ったん..


ピートとアリス
Lost Highway_06車の整備士ピート。腕は確かな若者だが、しばらくどこかに行っていたらしい。そんな彼を待ちわびていたのは雇い主のアーニーだけではなかった。
このまじめな若者が(どこかから)帰るのを待って車を持ってきたミスター・エディ。彼はピートを可愛がっており整備費もはずんでくれるが、彼の仕事はギャングのボスでいったん怒らせると手が付けられなくなるという面も持っていた。
翌日、もう1台車を整備に持ってきたミスター・エディ。対応したピートの目があるものに釘付けに。それは助手席に座る金髪美女アリスだった。2人は一目見るなり恋に落ち、ミスター・エディの目を盗み密会を続けるようになる。しかし2人の関係にミスター・エディが気付いているようだとわかるや、アリスはピートにこう提案する。
「金持ちの知り合いの家に盗みに入って、そのお金で2人で逃げよう」と。


ここからはピートが主人公。
Lost Highway_04フレッドの代わりに独房にいた彼だったが結局は警察に解放され自宅に戻る。自宅には優しい両親、近所には可愛い恋人、気のいい仲間達、腕前をいかした整備の仕事、とピートは充実した毎日を送っていたはずだ。しかしある夜、彼に何かが起き、ピートは連れ去られた。その何かの詳細について両親は決してピートに話さないので、見ているこっちに分かるはずがない..。
ピートとアリスは愛し合い、ミスター・エディから逃げ出すことを決めるが、好青年のピートは終始アリスの言いなりに。盗みに入ったはいいが家主に見つかり乱闘後、死亡事故が起こると、だんだんと見えてくるアリスの正体。
人が死んだことに恐れおののくピートを横目に、次々と金目のものをバッグに入れていくアリス。ピートがふと目をやった先には大写しにされたアリスのポルノ映画やミスター・エディとこの家の家主、アリスに似た女と4人で微笑んでいる写真。ようやく見つけ手に入れたと思った美しく大事なものが、するりと手から落ちていくように感じるピート。アリスは言った。「さぁ、行こう、砂漠にある故買屋の小屋へ」

Lost Highway_11何度も爆発して燃えては、フィルム逆回しで元に戻る故買商の小屋。
ここで盗んだものを金に換え逃げるはずだったが、アリスの姿は消え、小屋に入るとあの白塗りの男が。いやいや、その前に小屋に入ったのはフレッドだ..。ここでピートはフレッドに戻る。あーー、、やっぱりピートはフレッド。「独房にいたピート」はフレッドの妄想でしかなく、そもそも警察に逮捕もされていないのでは。
小屋で消えたアリス。アリスもフレッドの妄想の一部だろう。殺してしまった最愛の妻レネエをアリスの姿で蘇らせ、もう一人の自分ピートと深く愛し合わせた、ということか?そしてレネエの浮気相手をことごとく殺して回った、と。

Lost Highway_01何度も焼かれる小屋にいた白塗りの男は、全てを把握し理性的に行動する。必要なときに必要なものをフレッドに与え助言する。フレッドにとって不気味で疎ましく邪魔な存在でありながら、必要な人物。何度も焼かれ、また元に戻る小屋がそれを表している。
フレッド、ピート、白塗りの男。3人は全てフレッドの中にある。
あー、これも違うかも
ライトに照らし出されるハイウェイ。運転しているのはホントにフレッドか?だってフレッドは言っていた。
 “起こったとおり記憶したくない”

ふむ。もうこれは、ある男が運転中に魅力的な女性を見かけた。
「あんな女性が奥さんだったらなー」っと色々想像しているうちに、殺すことでしか自分のものにならないことに気がつき、想像することを一からやり直す。今度の自分は好青年。すぐに相思相愛になるも邪魔が入り、またもやうまくいかない。えーい、邪魔するヤツは皆殺し・・・
こんな妄想を退屈な運転中やっていただけの話ではないのか、と思い始めた自分。


しかし最後にデヴィッド・リンチ監督の追い討ちが待っていた。
フレッドが自宅のインターホンを鳴らし囁くのだ。
 “ディック・ロラントは死んだ”


・・もう私には、パトリシア・アークエットが綺麗だ、ということ以外何もわからない
   『マルホランド・ドライブ』の方がまし・・・

ではまた





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ blogramのブログランキング

関連記事

『ヘルタースケルター』(2012)

Posted by momorex on   0  0

日本の俳優やタレントにあまり詳しくないけれど、色々と話題になっていた本作を好奇心に駆られて観てみた。写真家であり『さくらん(2007)』の監督らしく、1シーン1シーンがそのまま芸術写真のような構図の作風。美しいたくさんの色、物に囲まれて、人形のように綺麗な主人公りりこが人間らしい感情を表に出すたび、その醜さが際立っていく。

■ ヘルタースケルター ■ 2012年/日本/127分
 監督 :蜷川 実花
 脚本 :金子ありさ
 原作 :岡崎 京子
 製作 :宇田 充、甘木モリオ
 撮影 :相馬 大輔
 音楽 :上野 耕路
 主題歌:浜崎あゆみ「evolution」、AA=「The Klock」
 出演 :沢尻エリカ (りりこ )
     大森 南朋 (麻田 誠)
     寺島しのぶ (羽田 美知子)
     綾野 剛  (奥村 伸一)
     水原 希子 (吉川 こずえ)
     新井 浩文 (沢鍋 錦二)
     鈴木 杏  (保須田 久美)
     寺島 進  (塚原 慶太)
     哀川 翔  (浜口 幹男)
     住吉真理子 (比留駒 千加子)
     窪塚 洋介 (南部 貴男)
     原田美枝子 (和智 久子)
     桃井かおり (多田 寛子)


解説:
岡崎京子の伝説的コミックを「パッチギ!」の沢尻エリカ主演、「さくらん」の蜷川実花監督で実写映画化。全身美容整形という秘密を抱えモデルの頂点に君臨するヒロインの際限のない欲望と転落への道のりを、過激な性愛描写と極彩色のヴィジュアルで描き出す。共演に大森南朋、寺島しのぶ、桃井かおり。
 

あらすじ:
完璧な美貌で芸能界の頂点に君臨するトップ・モデル、りりこ。実は、彼女には絶対に知られてはならない秘密があった。彼女の美しさは、ほとんど全身に施された美容整形の賜であり、そのために免疫抑制剤の服用が欠かせなかった。だが、整形の後遺症は確実にりりこの身体を蝕んでいく。そんな中、美容クリニックをめぐる事件を追う検事の影がりりこに迫る。さらに、生まれたままの美しさでりりこの存在を脅かす後輩モデルまで出現し、次第にりりこは精神的にも追い詰められていく。
 (allcinema)




ヘルタースケルター_05田舎から上京し、全身整形を施したうえでトップモデルとして芸能界に君臨するりりこ。その毎日は写真撮影、テレビ番組出演、インタビューなどで埋め尽くされ、息つく暇もない。自宅に戻っても化粧を落とす余裕も無く、眠っているシーンさえ無い。いつもいつも綺麗なりりこ。途切れも無いフラッシュで浮かび上がる人形のようなりりこ。途切れ無い声援の中で優雅に手を振るりりこ。女子高生達の憧れの的-。

雑誌のつるつるした表紙を飾る彼女。自分の姿を鏡に映し悦に入る彼女。
だがその裏では、若い新人モデルの登場におびえ、整形の後遺症が出だした身体におののき、しかしなすすべは無い。その度に整形手術を加えても毎年年齢は上積みされていく。

そんな彼女が生身の人間としての感情を爆発させ、自分の言葉で語り(叫び)出すと、一気にその内面の醜さが表れる。陰でりりこを支える付き人の羽田 美知子はその格好の標的だ。
お偉い芸能人様にはこんなタイプも多いのだろうが、羽田への要求と命令は日々ひどくなって、羽田の恋人までまきこんでの最低の仕打ちが行われる(これらのシーンでは思わず最近の「尼崎監禁事件」を思い出した)。

本作最初はりりこがどうなるのだろうかと興味津々で観ていたが、綺麗で完璧な「りりこ」がこれでもかと画面に登場し続け、(非道い行いもあってか)その存在に段々と飽きてくる。彼女自身よりも他の登場人物に目が行くようになる。
 ・りりこを芸能界にデビューさせた女社長
 ・後輩新人モデル
 ・付き人羽田
 ・整形手術の女医
 ・りりこの妹
それに何より、途中途中にはさまれる今時の女子高校生達。りりこに憧れ声援を送る彼女らは、一人が右を振り向くと一斉に皆そちらを見る。りりこが言っていたように「すぐに飽き」られ「忘れられる」。
こんなりりこを利用しがっぽり儲けている女社長や整形医の存在も対照的で、50代、60代になってなお美しい桃井かおりと原田美枝子を起用しているところも面白い。

ヘルタースケルター_03そして後輩の新人モデル(水原希子)。この子もりりことは対照的で、陶器のような美しさを持つ彼女とは違って、持って生まれた内面からにじみ出てくる可愛らしさがある。それに可愛いだけではない、理知的でドライな感じがより現代的。
年の割にはしっかりとしたタイプに見える新人だが、気をつけて。

赤い羽根が舞ってるよ。

途中から半ばうんざりしながら観ていた本作だったが、最後のワンカットに思わず声援を送りたくなった。
あの笑い方、最高だ。
ではまた





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ blogramのブログランキング

関連記事

『ロンリーハート』(2006) - Lonely Hearts -

Posted by momorex on   0  0

1940年代、全米中を震撼させた実在の凶悪犯カップル、レイ&マーサ。
けちな泥棒であり、結婚詐欺師だったレイがマーサと出会うことで目覚めてしまった人の残忍性。自分たちの生活のために独り身の寂しい女性“ロンリー・ハート”をだまして殺しては金品を奪うという自己中心的な残虐性。
そんな彼らを執念深く追う刑事エルマーと相棒チャールズは、この犯罪を止めることが出来るのか。

Lonely Hearts_000
■ロンリーハート - Lonely Hearts -■ 2006年/アメリカ/107分
 監督 :トッド・ロビンソン
 脚本 :トッド・ロビンソン
 製作 :ボアズ・デヴィッドソン、ホリー・ウィーアズマ
 制作総指揮:ランドール・エメット、ジョージ・ファーラ他
 撮影 :ピーター・レヴィ
 音楽 :マイケル・ダナ
 出演 :ジョン・トラボルタ  (エルマー・C・ロビンソン)
     ジェームズ・ガンドルフィーニ(チャールズ)
     ジャレッド・レト   (レイモンド・フェルナンデス)
     サルマ・ハエック   (マーサ・ベック)
     スコット・カーン   (ライリー)
     アリス・クリーグ   (ジャネット・ロング)
     ローラ・ダーン    (レネ・フォーディー)

解説:
1940年代、孤独な寡婦やオールドミスたちを次々に結婚詐欺のカモに釣りあげては金を巻き上げていた優男のレイと、その妹と称して彼に付き添い、残忍非道な殺人劇にも加担していたマーサ。過去にも映画「ハネムーン・キラーズ」などで取り上げられたこのアメリカ犯罪史上名高い凶悪事件を、本作では彼らを追う1人の刑事の視点から、じっくりと描写。監督は、J・トラヴォルタが劇中で演じた刑事の実際の孫にあたるT・ロビンソン。

あらすじ:
1940年代、優男の結婚詐欺師レイは、新聞の恋人募集欄から孤独な寡婦などの標的を選び出しては相手に近づいて甘い言葉を囁き、その持ち金を巻き上げていた。やがて、当初はそうして出会った女性のマーサが、彼の妹と称してレイの犯罪の仲間に加わるようになり、レイがカモの女性を相手にいちゃつくのを間近で見守っては嫉妬心を募らせ、残忍な殺人を犯すようになる。一方、そんな彼らのあとを刑事のエルマーが執念深く追いかけ-
 (WOWOW)




Lonely Hearts_01前髪が薄いのをカツラで隠したちょび髭の優男レイモンド・フェルナンデス。父親の愛情をあまり受けずに育った彼は20歳で結婚、英国情報部の仕事を手伝ったこともあったという。しかし事故で大けがを負った後、人が変わったようになり、つまらない窃盗で服役。ここから彼の転落人生が始まる。
口がうまく、女性の母性本能をくすぐるタイプなのか、それらをうまく使った結婚詐欺師が職業となる。
新聞記事等に短い募集広告が載る「ロンリー・ハーツ・クラブ」。これは独り身の寂しい女性達がお相手を探す場所だ。レイはこれを使ってせっせと仕事に励み、寂しい女性達から貞操と小切手を奪っては消えるということを繰り返す。
そしてある日、この方法で出会ったのがマーサ・ベックだった。

Lonely Hearts_08官能的な姿態の持ち主マーサ。実際はここまでの美人ではなかったようだが、彼女は看護師として働き、未婚で子供を産み育てていたが、愛情あふれた素晴らしい母親とはいえないタイプだ。結婚もしたが半年で破綻、お酒に溺れるようになっていく。
そんな時に職場の同僚が冗談でマーサの「ロンリー・ハーツ・クラブ」入会申請を行う。そして、たまたま出会ったのがレイモンド・フェルナンデスだった。

いつものようにだまして逃げ出すはずだったレイは、マーサに捕まる。まさしく蜘蛛の巣に絡め取られたような状態だ。マーサのレイへの愛情は深くどこまでも果てしない。普通に暮らしていれば、いい夫婦であったのかもしれないが、彼らの選んだ生活の糧は「結婚詐欺」。それもただの詐欺ではない。レイと相手の女性への嫉妬からマーサは、そしてすぐにレイまでも、騙した女性の命を奪うことをも厭わないようになっていく。



Lonely Hearts_09ある女性の自殺体が発見される。遺書が見つかり、自殺ということで処理されたが、何か引っかかった刑事エルマー・C・ロビンソン。仕事もあり、自立しいい家にも住んでいる。順調な毎日のはずなのに、何故自殺を?自殺には必ず理由があるはずだ。
翌日出た検視結果で妊娠していたことが判明し、男が絡んでいる犯罪だと直感するエルマー。他にも同じような自殺が無かったかと探し始め、糸口を探す彼。
事件性なんて無い、ただの自殺だろ、と同僚達はばかにしたが、直感を信じ捜査を始めたエルマーに協力したのは相棒のチャールズだけだった。

何故ここまでエルマーは自殺した女性を気にかけるのか..。それは数年前、自身の妻が遺書を遺すこと無く拳銃自殺したことが理由なのか。公私は分けた方がいい、事件にのめり込みすぎるな、と心配する相棒チャールズをよそに、どんどん捜査を進め、他にも急に理由もなく自殺した女性が複数いることを突き止め、彼女たちがある私書箱を管理する男と文通を続け、多額の貯金を下ろしている事実に行き当たる。その男とは-




実在の凶悪犯カップル、レイ&マーサ。彼らの毒牙にかかり命を奪われた犠牲者は20名を超えるという。彼らがこの恐ろしい犯罪を犯していた1940年代後半は戦後間もない頃であり、多くの未亡人が遺族補償金をもらいながら寂しい日々を過ごしていたことだろう。そこに目を付け人の弱みにつけ込み、金を巻き上げた上、命まで奪った2人の罪は大きい。
本作ではいくつかの手口が詳しく語られているが、中でも2人の最後の仕事となった母子殺害については、非常に残酷で見るに堪えないものがある。ぎりぎりで救えなかった刑事エルマーの慟哭は善良な人々のそれである。
最後の犠牲者となった娘はまだ2歳だった。

あらゆる州で罪を犯し、最後ミシガン州で逮捕されたレイとマーサは、死刑のあるニューヨーク州に引き渡される。2人は深く愛し合い、その愛のため殺人を犯すしかなかったと、マーサはマスコミに書き送った。マスコミは連日おもしろおかしく報じたが、当然のごとく2人には死刑判決が言い渡される。それは1951年3月8日、執行された。





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ blogramのブログランキング

関連記事

マスターズ・オブ・ホラー#1 「ムーンフェイス」 - Incident on and Off a Mountain Road -

Posted by momorex on   0  0

13人のホラー映画の巨匠が“最恐の称号”を賭けて競作した「マスターズ・オブ・ホラー」シリーズ。WOWOWで放送が始まった時にはワクワクしてテレビの前に座っていたことを思い出す..。前回観た時から適度に時間がたって、うまい具合に記憶があやふやになっているので、もういっぺん観てみることにしようっと。

MoH_01Incident on and Off a Mountain Road_00■ムーンフェイス - Incident on and Off a Mountain Road -■
 2005年・TV/アメリカ/58分

 監督   :ドン・コスカレリ
 脚本   :ドン・コスカレリ、スティーヴン・ロマーノ
 原作   :ジョー・R・ランズデール
 製作総指揮:キース・アディス、モリス・バーガー他
 音楽   :クリス・ストーン
 出演   :ブリー・ターナー    (エレン)
       ジョン・デサンティス  (ムーンフェイス)
       イーサン・エンブリー  (ブルース)
       ヘザー・フィーニー
       アンガス・スクリム

あらすじ:
森に住む殺人鬼“ムーンフェイス”に捕まった人妻エレン。夫に教わった戦闘術と殺人術で果敢に立ち向かうが-





120km先まで給油所が無いような山中の真っ暗な道を一人車を走らせるエレン。思い詰め疲れたような様子で運転していた彼女が一瞬前方から目を離したとき、道の真ん中に放り出されていた車が突然目の前に現れぶつかる。田舎道で事故を起こしたエレンは、停まっていた車の持ち主の安否を気遣い車外へ。しかし運転手の姿は無く、代わりに見つけたのは後部座席の大量の血痕。その血の跡は崖下まで続いていた。

MoH_01Incident on and Off a Mountain Road_06こうして安全な車中から、真っ暗な山の中へと身を置いたエレン。しかしそれはすぐに失敗であったことが分かる。運転手の代わりに崖下から飛び出してきたのは、見るもおぞましい2mを超す大男“ムーンフェイス”だった。

“ムーンフェイス”は山中の小屋に人知れず住む殺人鬼。通りすがりの人を捕まえては、目をくりぬき惨殺。その死体をキリストのように十字架にかけてモニュメントを作り小屋の前を飾る。小屋の前はさながら死体の万国博覧会のようになっていた。

しかしエレンはただの人妻ではなかった。軍事オタクの夫が徹底的にサバイバル術、戦闘術、殺人術を彼女にたたきこんでいたのだ。山中に逃げ込んだ彼女は、持てる全ての術を使って果敢にムーンフェイスに挑むが、最後には捕まり小屋へと連れて行かれる。そこには目をくりぬかれた大勢の犠牲者達が、静かに眠っていた-



MoH_01Incident on and Off a Mountain Road_021作目はドン・コスカレリ監督作「ムーンフェイス」。殺人鬼ホラー王道の設定に戦う美女が主役だが、この美女がただの美女ではない。夫に必要以上にしごかれ教えられた殺人術を持っている。この術を使っての殺人鬼との戦いに平行して、この夫とのやり取りが挟まるが、この夫がなぜこれほど妻へ術を教え込むのかがはっきりせず、不気味。夫婦が住むのも山中の小屋で、もしかしてこの世界は第3次世界大戦後か、エイリアンが攻めてきた後か何かの設定なのか?と思ってしまうほど。
夫はさかんに妻に対して「強くなれ。君は強い人のはずだ。見込みがある」と言うが、この夫の見立てはばっちり当たっていて、それは最後の最後に証明される。
人って見かけじゃわからないよ。というお話。

監督は『ファンタズム』のドン・コスカレリ。

監督 ドン・コスカレリ
アメリカの映画監督、脚本家。リビア生まれで、3歳の時にアメリカに移住。
1979年に監督したホラー映画『ファンタズム』(アヴォリッツァ国際ファンタスティック映画祭審査員特別賞受賞)のヒットで、一躍有名になった。以後シリーズ化して4作目まで製作しており、この作品がライフワークと化している感がある。そのため『ファンタズム』以外の作品もあるにはあるのだが、あまり知られてはいない。

■主な作品
 ・誰よりも素敵なジム(1976)
 ・ボーイズ・ボーイズ/ケニーと仲間たち(1976)
 ・ファンタズム(1979)
 ・ミラクルマスター/7つの大冒険(1982)
 ・ファンタズムII(1988)
 ・ファンタズムIII(1994)
 ・ファンタズムIV(1998)
 ・プレスリーVSミイラ男(2002)
 ・ムーンフェイス(2005)






Masters of Horror season1
監督
1
ムーンフェイス Incident On and Off a Mountain Road
ドン・コスカレリ
2
魔女の棲む館 H. P. Lovecraft's Dreams in the Witch-House
スチュアート・ゴードン
3
ダンス・オブ・ザ・デッド Dance of the Dead
トビー・フーパー
4
愛しのジェニファー Jenifer
ダリオ・アルジェント
5
チョコレート Chocolate
ミック・ギャリス
6
ゾンビの帰郷 Homecoming
ジョー・ダンテ
7
ディア・ウーマン Deer Woman
ジョン・ランディス
8
世界の終り Cigarette Burns
ジョン・カーペンター
9
閉ざされた場所 Fair Haired Child
ウィリアム・マローン
10
虫おんな Sick Girl
ラッキー・マッキー
11
ハンティング Pick Me Up
ラリー・コーエン
12
ヘッケルの死霊 Haeckel's Tale
ジョン・マクノートン
13
インプリント~ぼっけえ、きょうてえ~ Imprint
三池 崇史


 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ blogramのブログランキング

関連記事

マスターズ・オブ・ホラー#2 「魔女の棲む館」 - H. P. Lovecraft's Dreams in the Witch-House -

Posted by momorex on   0  0

「マスターズ・オブ・ホラー」シリーズ2作目でオカルトホラーの中でも魔女もの作品。原作はSF的なホラー小説が得意なハワード・フィリップス・ラヴクラフト。『死霊のはらわた』にも出演した「ネクロノミコン(死者の書)」も登場する。

MoH02_05■魔女の棲む館 - H. P. Lovecraft's Dreams in the Witch-House -■
 2005年・TV/アメリカ/58分

 監督   :スチュアート・ゴードン
 脚本   :デニス・パオリ、スチュアート・ゴードン
 原作   :H.P.ラヴクラフト
 製作総指揮:キース・アディス、モリス・バーガー他
 音楽   :リチャード・バンド
 撮影   :ジョン・ジョフィン
 出演   :エズラ・ゴッデン   (ウォルター)
       スーザン・ベイン   (フランセス)
       ジェイ・ブラゾー
       アンソニー・ハリソン

あらすじ:
研究論文を書くために古い屋敷の一室を借りた大学院生ウォルター。しかしその夜から彼は奇妙な夢を見始める。





MoH02_03家賃の安さに惹かれ、築300年にもなる古い屋敷の一室を間借りした大学院生ウォルター。論文を仕上げるために静かな環境を求めた末の決断だったが、偉そうな管理人、夜中にうるさい音を立てる他の住人などに悩まされることになった。

ネズミが出入りする穴を塞いであげたことで仲良くなった隣の美しい若い母親フランセスと幼子ダニーは彼の慰めになったが、その夜から彼は悪夢ともいうべき奇妙な夢を見始める。
最初に見たのが人間の顔をした話すネズミ。最初はネズミを追い払ったことで夢に出てきたんだろうと思ったウォルター。
MoH02_11しかし翌日見た夢では、誘惑するフランセスとベッドに入ると彼女が年老いた醜い魔女に変身するというもので、自分の大きな叫び声に目を覚ますことになる。

悪夢の後、目を覚ますと別の場所にいるようになったウォルターは自分は夢遊病かと疑うが、夢の中で負った傷が身体に残っており、全て現実であると確信する。
そしてネズミや魔女がその姿を現す自分の部屋の壁をハンマーで打ち砕き、中へと入っていくが、そこで見つけたものは何十体もの子供の骨だった-




MoH02_04魔女もののオカルトホラーである本作は、H.P.ラヴクラフト原作ということで単なるオカルトにとどまらず、魔女やネズミの住む世界とウォルターの住む人間世界は交点で結ばれており、ある条件が整えば空間が交わって自由に行き来できるようになるというSFチックな設定になっている。
(ウォルターによると、この世は11次元の世界があるらしい)
そしてその場所にたまたまいた男性を美しく化けた魔女が誘惑し、手下として刻印を付ける。ウォルターもまんまと騙され刻印を付けられるが、自分の意思とは関係なく魔女にやらされる仕事というのが、また恐ろしい。
また魔女といえば箒やカラスといったイメージだが、本作ではその使い魔は人面ネズミだ。この人面ネズミがまたよく出来ていて、じっくり見てみたい誘惑に駆られる。
人とは、なんと好奇心と誘惑に弱い生き物だろうか。一時の感情で身を滅ぼさないようにご用心。

監督は『ボディ・スナッチャーズ』の脚本を書いたスチュアート・ゴードン。

監督 スチュアート・ゴードン
作品傾向としては怪奇SFが多い。映画監督デビュー作となったH.P.ラヴクラフト原作の作品『ZOMBIO/死霊のしたたり』や、同じくラヴクラフト原作の『フロム・ビヨンド』が有名。これらの過剰な作風で一躍注目を集めたが、正統派ゴシックホラーである『ドールズ』、直球SFロボットアクション『ロボ・ジョックス』など、オーソドックスな作品でも評価が高い。

■主な監督作
 ・ZOMBIO/死霊のしたたり(1985)
 ・フロム・ビヨンド(1986)
 ・ドールズ(1987)
 ・ミクロキッズ(1989)
 ・ペンデュラム、悪魔のふりこ(1991)
 ・キャッスル・フリーク(1995)
 ・DAGON(2001)
 ・キング・オブ・バイオレンス(2003)
 ・魔女の棲む館(2005)
 ・THE CLASH ザ・クラッシュ(2007)
 ・黒猫(2007)






Masters of Horror season1
監督
1
ムーンフェイス Incident On and Off a Mountain Road
ドン・コスカレリ
2
魔女の棲む館 H. P. Lovecraft's Dreams in the Witch-House
スチュアート・ゴードン
3
ダンス・オブ・ザ・デッド Dance of the Dead
トビー・フーパー
4
愛しのジェニファー Jenifer
ダリオ・アルジェント
5
チョコレート Chocolate
ミック・ギャリス
6
ゾンビの帰郷 Homecoming
ジョー・ダンテ
7
ディア・ウーマン Deer Woman
ジョン・ランディス
8
世界の終り Cigarette Burns
ジョン・カーペンター
9
閉ざされた場所 Fair Haired Child
ウィリアム・マローン
10
虫おんな Sick Girl
ラッキー・マッキー
11
ハンティング Pick Me Up
ラリー・コーエン
12
ヘッケルの死霊 Haeckel's Tale
ジョン・マクノートン
13
インプリント~ぼっけえ、きょうてえ~ Imprint
三池 崇史


 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ blogramのブログランキング

関連記事

『グレイヴ・エンカウンターズ』(2011) - Grave Encounters -

Posted by momorex on   0  0

カナダから届いたモキュメンタリー・ホラー作品。最近流行の似たり寄ったりホラーかなー、と思いながらも舞台が「精神科病院の廃墟」と知って、ちょっとワクワクしながらテレビの前へ。ホラー作品は一通りチェックしていたつもりだったけど、これはWOWOWでやるまで知らなかった(全然だめやん)。主役ランス(ブルース・キャンベルにちょっと似てる?)の妙な説得力にぐいぐいと引き込まれ、いつしか彼らと一緒に病院の中を逃げ惑うことに。
仕事が忙しい時の気分転換はやっぱりホラーに限りますね-。

Grave Encounters_00
■グレイヴ・エンカウンターズ - Grave Encounters -■
 2011年/カナダ/94分
 監督   :ザ・ヴィシャス・ブラザーズ
 脚本   :ザ・ヴィシャス・ブラザーズ
 製作   :ショーン・アンゲルスキ
 制作総指揮:ショーン・アンゲルスキ他
 撮影   :トニー・ミルザ
 音楽   :クイン・クラドック
 出演   :ショーン・ロジャーソン(ランス・プレストン)
       アシュレイ・グリスコ (サシャ・パーカー)
       ファン・リーディンガー(マット・ホワイト)
       マッケンジー・グレイ (ヒューストン・グレイ)
       メルウィン・モンデサー(T.C.ギブソン)
       アーサー・コーバー  (フリードキン博士)

解説:
偽物を意味するモック+ドキュメンタリーで、モキュメンタリーと呼ばれる演出技法を使った戦慄のホラー。消息を絶った超常現象番組「グレイヴ・エンカウンターズ」のスタッフによる取材テープが発見された、という設定の下、廃病院で夜明かしすることになった撮影班が遭遇する恐怖を描く。米国劇場公開前、動画サイトにアップされた予告編が恐ろしすぎると話題になり、低予算作品ながらスマッシュヒットにつながる結果となった。

あらすじ:
超常現象の現場を突撃取材するTV番組「グレイヴ・エンカウンターズ(墓地との遭遇)」の撮影チームは、全米で最も危険と悪名高い心霊スポットの廃病院で一夜を明かすロケを敢行することになった。とはいえ、実は超常現象など信じていない彼らは、いつものようにヤラセでもっともらしいコメントや映像を収録し、さっさと番組をでっちあげる目算をつけていた。だがその夜、建物内で撮影を始めたクルーを本当の怪奇現象が襲う-
 (WOWOW)




Grave Encounters_21ランス・プレストン率いるTV番組「グレイヴ・エンカウンターズ(墓地との遭遇)」の撮影クルーが今回やって来たのは精神科病院の廃墟。それもただの廃墟では無い。広大な敷地に6棟もの建物が建つ大きな幽霊病院“コリンウッド精神科病院”。
その歴史は古く、建設は1893年。1963年に閉鎖されるまでに8万人もの患者を抱えたという。患者は重度の精神病患者ばかりだったが、その扱いはひどく、現代ほど精神病に対する理解も治療も確立されておらず、ロボトミー手術なども行われていた、そんな時代の巨大病院。1948年にはロボトミー手術の権威アーサー・フリードキン医師が患者によって惨殺されるなどの事件も起き、1960年頃から幽霊の目撃談が絶えなくなったという、曰く付き。

Grave Encounters_20今回の番組内容は、閉鎖されて半世紀近く経ったこの病院跡に一晩クルーだけで泊まり込むというもの。もちろん、そのカメラに幽霊を納めるというのが目的だ。
そしてその日、霊能力者1人を含むクルー5人はあらゆるゴーストハンター機材を持ち込んで建物内に乗り込んだ。玄関には外から施錠してもらうという、念の入りよう。この鍵は翌朝、管理人がやって来るまで開けることは出来ない。ここまでやらなければ、もしかしたら結末は違っていたのかもしれないが-。

Grave Encounters_17早速、彼らは幽霊の目撃談が多い場所10ヵ所に定点カメラを設置、建物内を手持ちカメラを持って探索に。何度閉めても開く窓、少女が自殺したバスタブ、全建物を繋ぐ地下迷路などなどを巡り、幽霊に話しかけ、声や音、画を撮ることに時間を費やす。
しかし何も起こらない..。
霊能力者キャラのヒューストンに適当にしゃべらせて番組を作っていたが、飽きて疲れてきた彼らは基地である玄関ロビーに戻り、定点カメラを回収することに。だが彼らは気がついていなかった。定点カメラが写したものに。
そしてカメラを回収に行ったマットが行方不明になった頃から、この病院の真の住人達が姿を現し始める-




一人、また一人と消えていくクルー、精神科病院、廃墟、マッド・サイエンティスト、苦しめられた患者、殺人事件、生きている建物、救いの無い結末、、などなど、どこかで観たいろいろな設定がごちゃ混ぜになってはいるものの、うまくまとまっていて、クルーの消え方もまぁ納得できる範囲。それに何よりも幽霊が結構怖い
途中、それはちょっと、、と思う表現はあるものの、最初にも書いたが主役ランスの行動が、普通のカメラと暗視カメラの切り替えも相まって、妙に説得力を持って目が離せない。
久しぶりに面白いホラーを観た、と感じた作品。続編『グレイヴ・エンカウンターズ2』もあるそうだが、これもちっとも知らなかった..。
映画館で観たら、より恐がれただろーなー

ではまた

 



にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ blogramのブログランキング

関連記事

『キラー・スナイパー』(2011) - Killer Joe -

Posted by momorex on   2  1

出てくる人、出てくる人、みんな人でなし。凡人の想像のとことん斜め上をいく救いの無さは、後味が悪くもあり爽快でもある。これは自分の人間性が試される作品だ。

Killer Joe_00s
■キラー・スナイパー - Killer Joe -■ 2011年/アメリカ/102分

 監督 :ウィリアム・フリードキン
 脚本 :トレイシー・レッツ
 原作 :トレイシー・レッツ「Killer Joe」
 製作 :ニコラス・シャルティエ他
 製作総指揮:ゼヴ・フォアマン他
 撮影 :キャレブ・デシャネル
 音楽 :タイラー・ベイツ
 出演 :マシュー・マコノヒー ("キラー"・ジョー・クーパー)
     エミール・ハーシュ  (クリス・スミス)
     ジュノー・テンプル  (ドティ・スミス)
     ジーナ・ガーション  (シャーラ・スミス)
     トーマス・ヘイデン・チャーチ (アンセル・スミス)
     マーク・マコーレイ  (ディガー・ソームズ)


解説:
「エクソシスト」で世界的に有名なウィリアム・フリードキンが監督した日本未公開作品。原作戯曲を執筆し脚本を手がけたのは「BUG/バグ」のトレイシー・レッツ。主演は「リンカーン弁護士」のマシュー・マコノヒーと「ダーケストアワー 消滅」のエミール・ハーシュが務めた。

あらすじ:
博打のせいで多額の借金を抱えるクリスは、実の父とその再婚相手である義母に、保険金目当ての実母殺害計画を打ち明ける。別れた母親の保険金は、父親に引き取られた頭の弱い妹ドティが受取人になっており、それを横取りしようというのだ。現職の刑事でありながら、金のために殺人を請け負う“キラー”ジョー・クーパーに母の殺害を持ちかけるが、彼は報酬を前金で受け取ると言い出した。トレイラーハウス暮らしのクリスたちにはそんな金などない。するとジョーは、前金の代わりとしてドティを要求してくるのだった-
 (allcinema)




Killer Joe_04借金を返せず切羽詰まったクリスがトレーラーハウスに住む父親のところに泣きつきに来る。「そんな金なんかない、逃げればいいだろ?」と寝ぼけたことを言う父親にクリスは相談。母親が妹ドティを受け取りに人にして保険に入っている。母親を殺そう。殺しの裏家業をやっている警官ジョーに頼めば大丈夫だ。

この母親は父親とは離婚しており、アル中の薬漬け。父親はシャーラと再婚。ここに妹ドティが一緒にいる。ドティは少し頭が弱いということだが、天使のように愛らしく兄クリスはとても大事に可愛がっている。早速ジョーに連絡したクリス。保険金は5万ドル。殺しの値段は2万5千ドル。残りは4人で山分けと決まる。
打ち合わせに来たジョーはドティを気に入り、前金が無いという父子に担保としてドティを借り受け、自分のものに。

Killer Joe_09まさか、こんな天使のような愛らしいドティに手を出さないと思っていたら、そのまま自分の思うようにするジョー。気にしながらも結局は可愛い妹を差し出した兄クリス。なんにも気にしない父親と義母。
これで保険金殺人の手はずは整ったはずだったが、どうしても妹に申し訳ないという思いが強くなり、クリスはジョーに無かったことにしてくれと言うが、、これがなんとも中途半端
今更遅いわ、と思わず突っ込む自分。

Killer Joe_10このふがいないクリスを筆頭に、本作の登場人物達はどれも人でなしの強烈なキャラクター達だ。
一度決めたことをすぐにひっくり返し、結局は銃で思い通りにしようとする中途半端キャラのクリス。おそらく彼は、最後まできちんとやり遂げたという達成感を知らずに今まで人生を無意味に過ごしてきただろう。何事も深く考えない父親は、目先のことで右へ行ったり左へ行ったり、自身のみならず自分の子供さえ大事にしない。義母シャーラはこれまた強烈。義理の息子がいようとも平気で半裸な姿で家の中をうろうろする口汚いののしり屋。特に最初の登場は下半身が丸見えのTシャツ1枚姿..。彼女に恥の概念は無い。

Killer Joe_07殺し屋ジョーは言うまでも無く、警官でありながらお金で殺しを請け負う殺人者。クールで隙の無い人物かと思いきや、ドティを金で買ったも同然に自分のものにする人でなし。うー、嫌悪感が
クリスを追い回すヤクザものは言うまでも無く、シャーラの浮気相手もひどいもの。

それでも人間には善良なる部分、正義感なるものがあるのではと、どの登場人物にもそれらを一瞬垣間見せるシーンがある。が、が、が、しかし、、それは見事に裏切られ、彼らの善なる魂は全てドティに移ってしまったか。
そして残る最後の登場人物、天使のドティが全てをうまくまとめるのかと期待したが、それも全て夢と消える。
おそらく、消えただろう..。今思えば、時々えげつないことを言っていた。

本作は脚本も書いたトレイシー・レッツの舞台劇を原作としている。いったいどんな舞台なのか、一度観てみたい気がする。
ではまた





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ blogramのブログランキング

関連記事

『ディヴァイド』(2011) - The Divide -

Posted by momorex on   0  0

核攻撃が起きた直後にアパート地下室に飛び込んだ9人の男女。同様のシチュエーションをベースにしたスリラー作品は多いが、今作ではいったいどうなるのか?結局、似たり寄ったりでしょ、と思いながらも結末を知りたい誘惑に打ち勝てず観ることに。結果、思いも寄らない役者さんが出ていたりして、結構見応えがありましたぞよ。

The Divide_00■ディヴァイド - The Divide -■
 2011年/アメリカ・カナダ・ドイツ/112分
 監督   :ザヴィエ・ジャン
 脚本   :カール・ミューラー、エロン・シーン
 製作   :ロス・M・ディナースタイン他
 制作総指揮:ジェイミー・カーマイケル他
 撮影   :ローラン・バレ
 音楽   :ジャン=ピエール・タイエブ
 出演   :ローレン・ジャーマン  (エヴァ)
       マイケル・ビーン    (ミッキー)
       マイロ・ヴィンティミリア(ジョシュ)
       コートニー・B・ヴァンス (デルヴィン)
       アシュトン・ホームズ  (エイドリアン)
       ロザンナ・アークエット (マリリン)
       イヴァン・ゴンザレス  (サム)
       マイケル・エクランド  (ボビー)
       アビー・シックソン   (ウェンディ)

解説:
 「フロンティア」「ヒットマン」のザヴィエ・ジャン監督が、壊滅したニューヨークを舞台に描くサスペンス・スリラー。突然の爆撃で街が崩壊する中、辛くも地下シェルターに逃げ込んだ9人の男女が、状況も分からぬまま次第に極限状況に追い込まれ、恐怖と混沌に支配されていくさまをスリリングに描く。 
 (allcinema)

あらすじ:
突然の攻撃により壊滅状態のニューヨーク。爆撃で建物が揺れる中、住んでいるアパートの地下室に逃げ込み厚い扉を閉ざした9人の男女。なんとか命は助かったものの、この場所に閉じ込められた彼らは外の状態も分からないまま、少なくなっていく食糧と互いへの不信感に緊迫状態に陥る。
そこへいきなり扉をこじ開け銃を持って進入してきた防護服の男達。彼らは味方なのか、それとも-





The Divide_11空から降り注ぐ無数の爆弾、揺れるビルから逃げだそうと出口に向かう人々、崩壊していく街ニューヨーク。そのアパートの住人は我先に外に出ようとしたが、出口付近で爆発が起こり地下へと続く階段を駆け下りる。いち早く地下にある管理人室にたどり着いた管理人ミッキーが、管理人室の重い鉄の扉を力の限り中から閉め切った。
とりあえずの爆撃からは逃げ切ることは出来たが、こうして窓の無い地下室に閉じこもった9人の男女。
 アパート管理人ミッキー
 3人の若者 ジョシュ、エイドリアン兄弟と友人のボビー
 カップル エヴァとサム
 母娘   マリリンとウェンディ
 黒人男性 デルヴィン

The Divide_06今までほとんど口をきいたこともない9人が狭い空間に押し込められることとなった。いったい何が、誰が攻撃してきたのかも分からない。その後、街が、ニューヨークが、アメリカがどうなっているのかも分からない。電話は無く携帯も通じない。
少ない食糧を分け合って食べていたが、3人の若者は我慢ならなくなった。鉄の扉を開け、外の様子を探ろうと言い出すが、半ば暴力的にミッキーは3人を押しとどめた。外は見たことを後悔するような地獄絵図となっており、空気も汚染されているに違いない。この扉を開けたらお終いだ。
ここ、地下室の空間を支配しているのは、主ミッキーだった。

The Divide_12唐突にその音は鳴り響いた。外から機械を使って扉を開ける音。皆はやっと救援隊が来たと安堵する。が、それもつかの間、入ってきたのは銃を持ち、防護服に身を包んだ複数の男達。男達は9人に銃口を向け威嚇し、少女ウェンディを連れ去った。9人は抵抗したが、容赦なく銃を撃たれエイドリアンが負傷。
再び扉は閉められた-




延々と続く密室劇だと思っていたところに、すぐに扉が開けられ救出か?じゃあこれからどうなるの?と考え直したところで、すぐにまた扉は閉まり密室へ。ここからが、本作の本当のストーリーが始まる。
娘をさらわれたマリリンを気遣い、今後どうするかを話し合い、しばらくはそれなりに秩序は保たれていた。が、食糧が残りわずかとなったあたりから、人格が変わり本性が現れ始める。
ストレスと不衛生な環境で髪は抜け、目は血走り、神経はすり減り、どんどん崩壊していく人間性。
The Divide_08閉じ込められた8人はそれぞれ思うように行動し始めるが、それはとてもリアルで、まるで何かの実験のようだ。
徒党を組み場を支配しようとする者、強い者にすり寄り守られようとする者、見て見ぬふりをする者。しかしそれは全て生きるためだ。何が起ころうと、他の者がどうなろうと、自分こそが生き抜くという本能だ。例外はない。

最後まで攻撃の真実と防護服の男達の正体は分からないが、このような状況下では、何であろうとあまり意味は持たない。そして生き残るためには一人ではだめなんだ、ということが最後に明かされる。

人間は知性と理性を持ってこそ人間なのだと証明される。







にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ blogramのブログランキング

関連記事

『えじき』(2004) - Dead Birds -

Posted by momorex on   0  0

頭を空っぽにしたくてホラーばかり観ているmomorexです。今回は前から気になっていた『えじき』。だってDVDジャケットがいかにも怖そうじゃないですか。子供系でゴシック系でオカルトホラーなのかな-、っとまたもや勝手に想像して観始める。あれ、1863年、、南北戦争の兵士、、あれ、、?

Dead Birds_00■えじき - Dead Birds -■ 2004年/アメリカ/91分
 監督   :アレックス・ターナー
 脚本   :サイモン・バレット
 製作   :デヴィッド・ヒラリー他
 撮影   :スティーヴ・イェドリン
 音楽   :ピーター・ロペス
 出演   :ヘンリー・トーマス(ウィリアム)
       ニッキー・エイコックス 
       イザイア・ワシントン
       マイケル・シャノン
       パトリック・フュジット


あらすじ:
19世紀半ば、南北戦争中のアメリカ。小さな町で銀行強盗を働いた一味が郊外の屋敷で一晩夜を明かすことになった。そこは人の住んでいない廃屋ということで下調べしてあったが、全身の皮を剥がされた得体のしれない生き物や鳥が無残に転がっている気持ちの悪い建物だった。屋敷の中を分かれて点検しだした彼らだったが、一人、また一人と仲間が消えていき-





Dead Birds_01小さな町の銀行で、関係の無い多くの人の命を奪い金貨を手にした強盗一味の6人。計画通り郊外まで逃げ、下調べしてあったトウモロコシ畑の中に佇む古い屋敷にたどり着く。突如、畑の中から全身皮を剥がされた不気味な動物に襲われた彼らは、ソレを撃ち殺し屋敷に入っていくが、他にも皮を剥がれた何かの死体や鳥が落ちており、とりあえず中を点検することに。

突然嵐もやって来た不気味な夜。
Dead Birds_022組に分かれて屋敷内を見回りだしたが、お互い相手のチームが金貨を独り占めにするのではと疑い、仲間割れ寸前の彼ら。そんな中、奇妙な子供の声が聞こえ始め、不気味な子供の姿が現れる。そして一人が行方不明に。何が起こっているかも分からないまま、行方不明の仲間を探すうち、一人、また一人と消えていく。
残された者も幻影のような男や繋がれ叫ぶ奴隷女、とても生きているとは思えない子供を見始め、ここが幽霊屋敷であると気がついたが、時すでに遅く、乗ってきた馬も無残な姿で殺されて逃げる術を失ってしまっていた-


---と、こう書くと面白そうでしょ?でも騙されちゃ駄目ですよ。
所々の怖いシーンや、マイケル・シャノンまで出ているというのに、話そのものがバラバラで消えてしまった男のその後や、幽霊を見させられている男の反応があまり描写されず、唐突に次の展開になるものだから、その度に突っかかって感情移入するほど入り込めない。それに何より幽霊達がなぜ幽霊になったのかも、通り一遍にしか描かれていないため、幽霊達にさえ同情することも出来ず。
何回か出てくる鳥の皮むき死体も原題「Dead Birds」にあやかってのことだろうけど、何を表しているのか伝えようとしているのかは全く無視され何も教えてもらえなかった
それでも終盤の雨のトウモロコシ畑のシーンはよく出来ていて、役者さん2人からは極度の緊張と恐怖が伝わってくる(何も怖いものは出てこないけど)。
そして最後。これは良かった。こうして心の黒い悪者は次々とこの屋敷に囚われて罰を与えられるんだろうな、と。

ちょっと残念な作品ではありましたが、最後が面白かったのでよしとしよう。
ではまた





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ blogramのブログランキング

関連記事
該当の記事は見つかりませんでした。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。