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momoな毎日

古いカルト映画から最新アクション、海外ドラマまでいろいろレビューしています。好物はオカルト、サイコ、殺人鬼、吸血鬼、廃病院、エイリアン、人魚、ローマ時代などなど。結果的にホラーものが増殖中。

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『アリス・クリードの失踪』(2009) - The Disappearance of Alice Creed -

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entry-image_46
ここには3人と、1発の銃弾、そして“嘘”が散らばっている。


Alice Creed_11

■アリス・クリードの失踪 -The Disappearance of Alice Creed-■
2009年/イギリス/101分
監督:J・ブレイクソン
脚本:J・ブレイクソン
製作:エイドリアン・スタージェス
製作総指揮:スティーヴ・クリスチャン他
音楽:マーク・キャナム
撮影:フィリップ・ブローバック
出演:ジェマ・アータートン(アリス・クリード)
   マーティン・コムストン(ダニー)
   エディ・マーサン(ヴィック)



解説:
イギリスの新鋭J・ブレイクソンが自らの脚本で長編監督デビューを飾り、高い評価を受けた緊迫のクライム・サスペンス。誘拐された富豪の娘と誘拐犯の男2人というわずか3人だけの登場人物が繰り広げる二転三転の物語の行方を、緻密な脚本と緊張感みなぎる演出でスリリングに描き出していく。出演は「007/慰めの報酬」のジェマ・アータートン、「SWEET SIXTEEN」のマーティン・コムストン、「シャーロック・ホームズ」のエディ・マーサン。
 (allcinema)

あらすじ:
刑務所で一緒だったヴィックとダニー。手っ取り早く稼ぐため、2人は誘拐を計画する。大富豪の一人娘アリス・クリードに目を付け、決行。白昼堂々、自宅を出たところのアリスをまんまと誘拐。車に押し込め、用意しておいたアパートの1室に監禁する。冷静な2人だったか、若いダニーは次第に不安を隠せなくなる-





登場人物は3人。誘拐犯の男2人と誘拐されたアリス・クリード。
舞台のほとんどは監禁に使われたアパートの1室のみ。
男2人が無言で着々と誘拐の下準備をする様は、まるで生のないロボットの動きのようで、プロの仕事を思わせ、恐ろしい。そこに泣き叫ぶアリスが囚われてくる。両手、両足をベッドに縛り付けられ、頭には頭巾。服を切り裂かれ、写真を撮られる。冷静沈着な犯人はそれを心配する親に送りつけ、身代金誘拐が成立した。もう後戻りは出来ない。

年長の男ヴィックが時間をかけ、練りに練った誘拐犯罪。
だが、ここからピンと張り詰めた空気が徐々に緩んでくる。
泣き叫び、感情を露わにしていたのはアリスだけだったのが、次第に若いダニーが不安を隠せなくなってくる。
ヴィックは「大きなヤマだが、必ずうまくいく」と声をかけるが、ダニーの不安は果たしてそれだけなのか・・?


監督 J・ブレイクソン
脚本も勤めており、本作が監督デビュー作である。
他の作品として『ディセント2(2009)』の脚本も担当している。

信頼のおける仲間であったはずの人間が、突如敵に回る。そういった緊迫感のある人間関係を描くのがうまい。

ジェマ・アータートン(アリス・クリード)
Alice Creed_03出かけようと自宅を出たところで突然誘拐される。
誘拐された者の恐怖を演じたジェマ・アータートン。彼女の涙と汗が飛び散るような演技に、突如、見知らぬ男達に自由を奪われ、死と向き合うことになった恐怖が迫ってくる。
2007年、演劇学校在学中にテレビ映画『Capturing Mary』でデビュー。同年公開の『聖トリニアンズ女学院(2007)』に出演し映画デビューを果たした。その後、『007 慰めの報酬(2008)』ではボンドガールを、『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂(2010)』ではヒロイン、『タイタンの戦い(2010)』ではイーオを演じている。


マーティン・コムストン(ダニー)
Alice Creed_02仲間ヴィックとアリスにはさまれて苦悩するが、いったいそのどちらの側に付くのか。観ているものには判断できず先が読めない。
優しいのか、ずるいのか、誠実なのか、嘘つきなのか。マーティン・コムストンは、この微妙な役どころを見事に演じている。
主な出演作に『SWEET SIXTEEN(2002)』があり、主演をつとめている。


エディ・マーサン(ヴィック)
Alice Creed_01綿密な計画を獄中でたて、出所後すぐにダニーと決行する。その計画、動きには無駄が無く、この身代金誘拐は完璧なはずだった。
一見、むさ苦しい親父のようだが、プロに徹した動きと、その合間に見せる人間らしさに、徐々に魅力的に見えてくるから不思議だ。イギリスの俳優でハリウッド作品の出演作も多い。

 ・『21グラム(2004)』
 ・『M:i:III(2006)』
 ・『マイアミ・バイス(2006)』
 ・『ハンコック(2008)』
 ・『シャーロック・ホームズ(2010)』
 ・『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム(2012)』
 ・『戦火の馬(2012)』




普通の誘拐劇ならば、ヒロインが逃げ出し、犯人は射殺というところだが、この作品は違う。
感情の入りこむ余地のない完璧な犯罪だったはずが、3人の嘘と疑心暗鬼が交錯し、次第にエゴが剥き出しになっていく。3人の関係はとても複雑で、その結末は-、観てのお楽しみです。

ではまた

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『バンド・オブ・ブラザース』 第1話/翼のために-Currahee

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■バンド・オブ・ブラザース -Band of Brothers-■
 第1話/翼のために-Currahee


Bob_32


監督:フィル・アルデン・ロビンソン
脚本:エリック・ジェンドレセン、トム・ハンクス
出演:
“ディック”リチャード・ウィンターズ少佐(ダミアン・ルイス)
ルイス・ニクソン大尉(ロン・リビングストン)
カーウッド・リプトン少尉(ドニー・ウォルバーグ)
“ビル”ウィリアム・ガルニア軍曹(フランク・ジョン・ヒューズ)
“ドン”ドナルド・マラーキー軍曹(スコット・グライムス)
“バック”リン・コンプトン中尉(ニール・マクドノー)
ロナルド・スピアーズ大尉(マシュー・セトル)
“ブル”デンバー・ランドルマン軍曹(マイケル・ガドリッツ)
フランク・ペルコンテ軍曹(ジェームズ・マディオ)
ジョージ・ラズ軍曹(リック・ゴメス)
ジョセフ・リーブゴット伍長(ロス・マッコール)
“ケニヨン”デビッド・ウェブスター一等兵(イーオン・ベイリー)
“ジョー”ジョセフ・トイ伍長(カーク・アセベド)
ドナルド・フーブラ伍長(ピーター・マッケイブ)
フロイド・タルバート一等軍曹(マシュー・リーチ)
アルバート・ブライス二等兵(マーク・ウォレン)
ハーバート・ソベル大尉(デヴィッド・シュワイマー)


■あらすじ:
1944年6月5日。
米陸軍101空挺師団所属、第506パラシュート歩兵連隊「E中隊(Easy Company)」はノルマンディー降下作戦のためアポッタリー飛行場を後にした。彼らは2年もの間、この作戦のために厳しい訓練を耐え抜いた、生え抜きのエリート達だった。
1942年。ジョージア州トコア駐屯地。
隊員をいじめ抜くことで、よりよい兵隊を育てると考えている横暴な指揮官ソベル中尉(のち大尉)。その下でウィンターズ少尉は中隊をまとめあげていく。
Bob_13




第1話では、志願兵だった隊員達が1942年に新設された「第506パラシュート歩兵連隊」で鍛え上げられ、一つのまとまった部隊になる様子と、それを見守るウィンターズ少尉(のち中尉)が描かれる。
2年にも渡り訓練を積んできたE中隊。E中隊の動きとともに訓練内容を追ってみる。
その前に
第101空挺師団とは
US_101stアメリカ陸軍の師団の一つ。ニックネームはスクリーミングイーグル。「叫ぶ鷲」の意味で、以前は南北戦争で戦った北軍の第8ウィスコンシン歩兵連隊が部隊のニックネームとして使用していた。第一次大戦後に予備役歩兵師団として編成され、第二次大戦中にパラシュート部隊として改変、ベトナム戦争以降は空中強襲部隊としてヘリボーン作戦に従事している。
師団は、軍隊の部隊単位のひとつ。旅団より大きく、軍団より小さい。主たる作戦単位であるとともに、地域的または期間的に独立して、一正面の作戦を遂行する能力を保有する最小の戦略単位とされることが多い。
編成は、「分隊→小隊→中隊→連隊→師団」の流れになっている。
プライベート・ライアン』のライアン2等兵もここの所属でした。


■1942年 ジョージア州トコア駐屯地
Bob_00志願兵の彼らはまず、この地に集められ、空挺隊員になるための訓練と試験を受ける。
この厳しい訓練を終えた者だけが、空挺隊員章をもらえ、実際のパラシュート降下を行う資格を有することが出来る。
E中隊を含む第506パラシュート歩兵連隊は、出撃まで712日も訓練に費やした。
ソベル中尉は、連隊の中で中隊トップを目指し、虐めとも思われる厳しい訓練を行って隊員達に嫌われたが、その訓練のおかげでエリートといわれた連隊の中でトップになれたことも事実である。
彼ら隊員達は陸地での基礎訓練の後、C47機で1000フィート(約300メートル)の上空からの降下訓練を5回受けて、トコア駐屯地を卒業した。ソベル中尉は大尉に、ウィンターズ少尉は中尉に昇格。
E中隊が訓練中も背景で次々と兵舎が建てられている様子が映り、どんどん兵力が増員されていることが分かる。


トコア (Toccoa) は、アメリカ合衆国ジョージア州に存在する都市。カラヒー山の麓にあり、アメリカ製作のドラマ『バンド・オブ・ブラザース』で基幹部隊の第101空挺師団第506パラシュート歩兵連隊(506 P.I.R/101Div)の駐屯地があった。同ドラマで一躍有名になった。なお、カラヒーの意味は先住民の言葉で『独り立つ』である。
現在、同駐屯地跡が記念館として一般に公開されており、ドラマで俳優たちが着用していた白地に落下傘を描いたシャツがお土産の一番人気を占めている。同作品の始まりの地として、落下傘兵ヒストリカルリエナクターや当時の隊員からも愛されている。 (Wikiより


■1943年6月 ノースカロライナ州マッコール駐屯地
Bob_000ここでは、戦術などの実際と、敵味方に分かれての野外演習を行った。
基礎訓練時は、その横暴さをほしいままにしていたソベル大尉だったが、野外演習では地図が読めない、作戦に対する決断が下せないなど、リーダーとしての資質が問われるようになる。それとは逆にウィンターズ中尉は戦術にたけ、部下達の信頼をますます得ることになった。


■1943年9月 ニューヨーク~イギリス・アルドボーンへ
EnglandWiltshireイギリスへ船で向かうため、列車でニューヨークに移動。士官、隊員達に行き先は告げられていなかった。イギリス ウィルトシャー州アルドボーンでも戦闘訓練を積む。
ここでもソベル大尉の野外演習での失態が続き、ソベル大尉はウィンターズ中尉に難癖をつけ嫌がらせを続ける。(ラズが物真似をし、牛を逃がしたのがここ)
ソベル大尉は作戦決行前に「E中隊」隊長を解任された。後任はB中隊のミーハン中尉。


■1944年5月31日 アポッタリー空軍基地
Bob_10いよいよ出撃が決まった。任務はノルマンディ上陸作戦を成功させるため、ノルマンディーに降下。ドイツ軍サン・マリー・デュ・モン駐屯地を潰し、カランタンを制圧することにある。
第1話は、隊員を乗せて飛行機が飛び立つところで締めくくられる。




第1話は登場人物の紹介も兼ねて主立った兵士が一通り出てくるので、顔と名前がなかなか一度には覚えられない
そこで第1話で分かる範囲で隊員達をまとめてみました。

“ディック”リチャード・ウィンターズ中尉(ダミアン・ルイス)
Bob_14部下から慕われ、精神的支柱になるE中隊の副隊長。
生真面目で酒も飲まないが、ウィットに富み、軍での自分の考えを曲げることはない。アポッタリー空軍基地で出撃の際、重い装備を付けている部下の一人一人を立たせてやる場面。言葉に出さなくとも部下を思いやる、信頼の厚い上官だということがよくわかる名場面だ。
ダミアン・ルイスはイギリス・ロンドン出身の俳優、映画プロデューサー。母方の祖父は元ロンドン市長であり、祖母は王家専属の医者であった。線の細さがいかにもイギリス人ぽいが、本作ではアメリカの将校だ。
■主な出演作
 ・フォーサイト家 ~愛とプライド~ The Forsyte Saga (TV/2002)
 ・ドリームキャッチャー Dreamcatcher (2003)
 ・シェイクスピア21-から騒ぎ Much Ado About Nothing (TV映画/2005)
 ・大脱走 コルディッツ収容所 Colditz (TV映画/2005)
 ・アンフィニッシュ・ライフ An Unfinished Life (2005)
 ・アレックス・ライダー Stormbreaker (2006)
 ・Life 真実へのパズル Life (TV/2007)
 ・ロード・オブ・クエスト ドラゴンとユニコーンの剣 Your Highness (2011)


ハーバート・ソベル大尉(デヴィッド・シュワイマー)
Bob_20何が彼をここまでさせるのか。
理由は分かりませんが、隊員達をこれでもか、というほどしごき抜く。その根底にあるものが隊員達を思いやる心であるならば、ここまで嫌われはしないだろう。
こんなイヤな役を見事に演じたのが「フレンズ」のデヴィッド・シュワイマー。あまりの豹変ぶりに、ホントにあのロス?と疑った。本作でもやはり背が高かったですね。隊員達が小さめな人が多かったので、意地悪な隣の大人に怒られている子供みたいだった。
1966年ニューヨークのクイーンズ区生まれ。身長188cm。


Bob_15Bob_22(リプトン)Bob_25(ガルニア)
ルイス・ニクソン大尉カーウッド・リプトン軍曹ビル”・ガルニア軍曹


Bob_31(ラズ)Bob_19(マラーキー)Bob_16(ペルコンテ)
ジョージ・ラズ軍曹“ドン”・マラーキー軍曹フランク・ペルコンテ軍曹


Bob_27(ラニー軍曹)Bob_29(ミーハン中尉)Bob_28(コンプトン)
ラニー軍曹ミーハン中尉“バック”・コンプトン中尉



とりあえずは以上で。
やっと1話目の記事が終了。放送後もしばらくかかるでしょうが、がんばって第10話まで書きたいと思います。
ではまた


IMAGICA BS『バンド・オブ・ブラザース』の無料放送日
 5月4日(金)16:00~20:45 第1話~4話
 5月5日(土)17:00~21:00 第5話~7話
 5月6日(日)17:00~21:00 第8話~10話


■各話あらすじとブログ内記事リンク
放送告知 ノルマンディ上陸作戦概要
第1話 翼のために
 -Currahee
 (この記事)
第2話 ノルマンディ降下作戦
 -Day of Days
1944年6月5日、ノルマンディ上陸作戦決行前夜。激しい対空砲火の中、E中隊はパラシュートでドイツ軍占領下のノルマンディに降り立つ。だが部隊は散り散りになり、目的地に向かうにも困難が立ちはだかる。
第3話 カランタン攻略
 -Carentan
上陸作戦決行日から6日後、E中隊はカランタンの町に入る。ドイツ軍の精鋭部隊が防衛するカランタンでは激しい市街戦が行われる。
第4話 補充兵
 -Replacements
1944年9月、E中隊に新参の補充兵たちが配属され、オランダにパラシュートで降下する「マーケット・ガーデン作戦」が展開される。
第5話 岐路
 -Crossroads
1944 年10月、ウィンターズ中尉は膠着状態となっていたオランダの運河で危険な任務を遂行した後、第2連隊の幕僚に昇進する。休暇をとりパリを訪れたウィンターズだったが-。
第6話 衛生兵
 -Bastogne
1944年12月、ベルギーの町・バストーニュで第101空挺師団がドイツ軍に完全包囲される一方で、E中隊は町の近郊にある森で塹壕を掘って布陣を張った。しかし深い雪と厳寒に苦しめられ、食料や弾薬、冬装備、医療品が不足する-。
第7話 雪原の死闘
 -The Breaking Point
1945年1月2日、ベルギーのバストーニュでドイツ軍の度重なる攻撃に耐えたE中隊はついに反撃を開始し、フォイ村の攻略を命じられる。フォイ村までの雪原を進攻し始めたE中隊だったが-。
第8話 捕虜を捉えろ
 -The Patrol
1945年2月、E中隊はドイツ国境に近いアルザス地方の町・ハーゲナウに入った。負傷して前線を離れていたウェブスターが隊に復帰したが、仲間の反応は冷ややか。そんな中、ライン川を渡りドイツ軍の捕虜を捕らえるよう命令を受ける。
第9話 なぜ戦うのか
 -Why We Fight
1945年4月、E中隊は国境を越えてついにドイツ領内に侵攻した。ドイツ軍の抵抗はほとんどなく、さらにルーズベルト大統領死去の報せが連隊に届く。そんな中、パトロール中の兵士が強制収容所を発見する。
第10話 戦いの後で
 -Points
1945年7月、E中隊はドイツのバイエルン地方にあるヒトラーの山荘「イーグルズ・ネスト」を占拠することに成功。ウィンターズはドイツ軍が降伏したことを知らされる。




2013/8/7『バンド・オブ・ブラザース』待望コンプリート・ボックスがリリース決定
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『バンド・オブ・ブラザース』 第2話/ノルマンディ降下作戦 -Day of Days

Posted by momorex on   0  0

■バンド・オブ・ブラザース -Band of Brothers-■
 第2話/ノルマンディ降下作戦 -Day of Days


BoB_042


 監督:リチャード・ロンクレイン
 脚本:ジョン・オーロフ

■あらすじ:
BoB_0121944年6月5日。ノルマンディ上陸作戦決行前夜。激しい対空砲火の中、E中隊はパラシュートでドイツ軍占領下のノルマンディに降り立つ。降下の際の衝撃で装備が吹き飛んだ兵士も多かった。ウィンターズは散り散りになった部下を少しずつ集め、何とか大隊と合流する。
E中隊の次なる任務は、ブレクールにあるドイツ軍の砦を破壊することだった。安否不明の隊長ミーハン中尉に代わり、ウィンターズが指揮を執ることになる-




第2話は、10話の中でも一番のお気に入りだ。
1話目を観て想像していたのとは全く違った、対空砲火で味方の飛行機が撃墜される中での夜間パラシュート降下と、後に固定目標攻撃の手本となった砦の破壊を観ることが出来る。

■1944年6月6日未明 ノルマンディ降下
BoB_005E中隊はユタ・ビーチに上陸するアメリカ軍を助けるため、内陸側に降り立った。総勢何名の第101空挺師団が降下したのかは、調べた限り不明だったが、降下後、24時間で集合できたのが3000名。ドラマ内でウィンターズ達が大隊と合流した時点で9割が行方不明と言っていたので、総勢20000~30000名が降下したことになるのか。
E中隊のパラシュート降下の様子は詳細に描かれている。アポッタリーを出て海を越え、雲が切れた途端にドイツ軍の対空砲火が雨あられと(下から)飛んでくる。次々と味方の輸送機が撃墜される中、予め決められていた降下地点に向けての降下はほとんど出来ていない。隊員達は降下するというよりも墜落寸前の輸送機から振り落とされるように落ちていく。

BoB_019ウィンターズ達が無事に降下できたのは、運がよかったと言わざるを得ない。
この一連のシーンでは砲撃される緊迫の輸送機から飛び降り、味方が撃墜される中、地面に着地するまでをウィンターズと一緒に味わうことが出来ます。

  ノルマンディ上陸作戦概要


■1944年6月6日 ブレクール砲塁攻略戦
E中隊隊長のミーハン中尉の安否が不明なため、ウィンターズは中隊長代行となり、この作戦を指揮することになる。
ドイツ軍ブレクール砲塁は、88ミリ砲をユタ・ビーチに向けて砲撃しており、アメリカ軍の上陸を妨げていた。
ブレクール砲塁攻略戦
ウィンターズ中尉は、中隊の指揮を任されるなり、「ブレクール・マノールという、近郊の生垣に敵の砲塁がある。何とかしろ」との命令をうけた。戦場の状況説明もなかったが、ウィンターズはこのドイツ軍の砲台を破壊するべく行動を開始した。
BoB_040午前8:30、ウィンターズは敵陣を偵察した後、自身と他の部隊から計13名の兵を選出。 砲塁の位置についてはおおまかにグランシュマン村南部とだけ知らされており、敵戦力も不明なまま、ウィンターズ率いる部隊はユタ・ビーチ南西4.8km、サン・マリー・デュモンの北に位置するブレクール砲塁に攻撃を開始した。
堡塁には塹壕で繋げられた105mm砲4門と一個小隊に守備された第90砲兵連隊第6砲兵隊60名が配備されていた。
ウィンターズは砲塁に到着してから敵陣攻略の計画を立てた。まず、2挺のブローニングM1919重機関銃を援護射撃のため配置につけた。つぎに3名の兵(リン・コンプトン少尉、ウィリアム・ガルニア軍曹、ドナルド・マラーキー二等兵)を敵陣の側面に送り、敵の機関銃を破壊したうえで味方に援護射撃をさせた。
BoB_041砲塁は、守備力強化と補給を容易にする目的で105mm砲4門が塹壕で繋がっていたが、これは同時にこの砲塁最大の弱点ともなった。最初の砲台を破壊した後、ウィンターズは部隊を率い、塹壕をつたって敵の攻撃を遮りながら次々に砲台を破壊した。この際、砲塔にTNT火薬を入れ、ドイツ軍の手榴弾を点火のために使用した。

ほどなくロナルド・スピアーズ少尉に率いられたD中隊増援が到着し、最後の砲台の攻略にかかった。スピアーズは優秀で極めて積極果敢な士官との評判であったが、このときスピアーズは塹壕の外を走り、自らの身を銃火にさらしながら隊員を率いて砲台を攻めた。
ウィンターズの部隊は、4つの砲台の無力化に成功し、ブレクール敵陣からの重機関銃砲火をうけながら撤退した。なお戦闘中ウィンターズは砲台陣地のうちの一つからドイツ軍の地図を入手していた。この地図にはコタンタン半島のすべてのドイツ軍砲台陣地が記されており、この計り知れないほど貴重な情報はアメリカ軍司令部の下に届けられた。

以上の功績によりウィンターズ以下、戦闘参加者が受勲している。


殊勲十字章
 ・リチャード・ウィンターズ中尉
銀星章
 ・“バック”リン・コンプトン少尉
 ・“ワイルド・ビル”ウィリアム・ガルニア軍曹
 ・ジェラルド・ロレイン二等兵
青銅星章
 ・カーウッド・リプトン軍曹
 ・“ポパイ”ロバート・ウィン二等兵
 ・クリーブランド・ペティ二等兵
 ・ウォルター・ヘンドリックス二等兵
 ・ドナルド・マラーキー二等兵
 ・マイロン・ラニ―上等兵
 ・ジョセフ・リーブゴット二等兵
 ・ジョン・プレシャ二等兵
 ・ジョー・トイ伍長
パープルハート章
 ・“ポパイ”ロバート・ウィン二等兵
 ・ジョン・ホール上等兵
 ・アンドリュー・ヒル准尉


このシーンも手持ちカメラによる素晴らしい臨場感で、ウィンターズと一緒に塹壕の中を走り抜けることになる。
射撃をしながら身をかがめて塹壕を走り、敵、味方の動きを的確につかみ指示を出す。ソベル大尉には無理だったことだろう。
この戦闘での戦死者4名、負傷2名。ドイツ軍の戦死者は20名、捕虜12名、砲台無力化4門。

この後E中隊はカランタンに向かう。



■登場人物1話目からの続き)
BoB_027(ホール) BoB_035(トイ) BoB_032(スピアーズ)
ジョン・ホール上等兵 “ジョー”・トイ伍長 ロナルド・スピアーズ大尉




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 5月4日(金)16:00~20:45 第1話~4話
 5月5日(土)17:00~21:00 第5話~7話
 5月6日(日)17:00~21:00 第8話~10話


■各話あらすじとブログ内記事リンク
放送告知 ノルマンディ上陸作戦概要
第1話 翼のために
 -Currahee
1944年6月4日、ノルマンディ上陸作戦決行直前。
E中隊のウィンターズ中尉は2年前の夏、ジョージア州トコア基地での訓練の日々を思い返していた。
第2話 ノルマンディ降下作戦
 -Day of Days
 (この記事)
第3話 カランタン攻略
 -Carentan
上陸作戦決行日から6日後、E中隊はカランタンの町に入る。ドイツ軍の精鋭部隊が防衛するカランタンでは激しい市街戦が行われる。
第4話 補充兵
 -Replacements
1944年9月、E中隊に新参の補充兵たちが配属され、オランダにパラシュートで降下する「マーケット・ガーデン作戦」が展開される。
第5話 岐路
 -Crossroads
1944 年10月、ウィンターズ中尉は膠着状態となっていたオランダの運河で危険な任務を遂行した後、第2連隊の幕僚に昇進する。休暇をとりパリを訪れたウィンターズだったが-。
第6話 衛生兵
 -Bastogne
1944年12月、ベルギーの町・バストーニュで第101空挺師団がドイツ軍に完全包囲される一方で、E中隊は町の近郊にある森で塹壕を掘って布陣を張った。しかし深い雪と厳寒に苦しめられ、食料や弾薬、冬装備、医療品が不足する-。
第7話 雪原の死闘
 -The Breaking Point
1945年1月2日、ベルギーのバストーニュでドイツ軍の度重なる攻撃に耐えたE中隊はついに反撃を開始し、フォイ村の攻略を命じられる。フォイ村までの雪原を進攻し始めたE中隊だったが-。
第8話 捕虜を捉えろ
 -The Patrol
1945年2月、E中隊はドイツ国境に近いアルザス地方の町・ハーゲナウに入った。負傷して前線を離れていたウェブスターが隊に復帰したが、仲間の反応は冷ややか。そんな中、ライン川を渡りドイツ軍の捕虜を捕らえるよう命令を受ける。
第9話 なぜ戦うのか
 -Why We Fight
1945年4月、E中隊は国境を越えてついにドイツ領内に侵攻した。ドイツ軍の抵抗はほとんどなく、さらにルーズベルト大統領死去の報せが連隊に届く。そんな中、パトロール中の兵士が強制収容所を発見する。
第10話 戦いの後で
 -Points
1945年7月、E中隊はドイツのバイエルン地方にあるヒトラーの山荘「イーグルズ・ネスト」を占拠することに成功。ウィンターズはドイツ軍が降伏したことを知らされる。




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コミック再考2012 ~GW明け。さらに現実逃避してみる

Posted by momorex on   4  0

4月の終わりに届いた「スカパー!Days5月号」(スカパー無料番組案内誌)。
何か拾いものはないかとパラパラめくっていると、ありました。

 高橋留美子劇場 人魚の森 
   キッズステーション 5月7日 深夜0:30~(毎週月曜日他)


このタイトルを見た途端、さぁーーーっと頭の中が10年以上も前に引き戻された。
少女が、まだ少女で少女だった頃から、読んだおとぎ話の影響か、脊髄反射するいくつかの名詞がある。
その中の一つが「人魚」。
それは今も変わらない。大人になって読む本、観る映画を決める時にも必ず目がとまる。
で今、机にのっているTSUTAYA Discasの袋の中にもこんなものが入っている。

既に2回は観ている。どうしてかは分からない。脊髄反射のなせる技なので。
      レビューはこちら『人喰い人魚伝説

今思えば、楳図かずお氏の

こんなのの影響で、今でも「うろこ」が異常に怖い。魚をさばいて鱗を取り除く作業などは、ほとんど自虐行為だ。
がしかし、「人魚」に魅せられ、そのしっぽ部分の造形に心を引かれるのはなんなんだろう。
 ※今現在、一番気に入っているしっぽはダリル・ハンナの『スプラッシュ(1984)』。


最近、「ヴァンパイア」はよく目にするが、「人魚」は久しぶりだった。
そして『人魚の森』は『人魚の傷』と一緒にコミックを持っていて大好きだった。
で、今日は朝から、大人が一人で録画予約したアニメを観てしまった。
アニメはやっぱりちょっと違うな。本の方がいいな。どこいったかなぁ。などと思いながら。
ちなみに録画は毎週予約になっている-。




自分は凝り性なので、今までどっぷりとハマったものがいくつか(も)ある。
そんな中で青春(必ずしも10代とは限らない)前後にハマった事の中にいくつかのコミックがある。
(マンガとも言う。) 今回はそんなものを紹介していきたい。
興味のある方はどうぞ↓下へお進み下さい。




■ゴルゴ13さいとう・たかを (連載1968.11~)




ある日の会社帰り。電車で読むため売店で買った「ビッグコミック」。
そこで始めて『ゴルゴ13』に出会う。
「ゴルゴダの丘でイエス・キリストに荊の冠をかぶせて殺した13番目の男」という不吉な名前を持った孤高のスナイパー。愛用する銃は強化を施した「M16」。大人向けの劇画作品である。
1968年(昭和43年)11月(1969年1月号)から小学館『ビッグコミック』誌で連載が開始され、2012年5月現在も連載中。単行本は2012年4月に164巻が出ている。

内容は

社会の裏側、あるいは裏と表の境界線上がゴルゴ13の活躍の舞台である。ストーリーの題材は、脚本家が多数に及ぶこともあって、非常に多岐にわたる。諜報戦に代表される国家間の暗闘、戦争・紛争、ゲリラ活動、テロリズム、麻薬組織など犯罪組織、企業活動、芸術・スポーツなど文化活動、歴史問題・地理問題、最新テクノロジー、ミステリー、自然災害なども題材となっている。
作品には、現実に起きた事件に交えて実在の国名・組織・企業・団体そして個人の名前がしばしば登場する。作中のリード文に『A国のBという組織の存在により、C国との関係が芳しくない』といった主旨の内容が書かれる影響もあると推察されるが、この作品で世界情勢を覚えることができるという話もあったり、この作品をモチーフに世界情勢を語る書籍も発行されたりしているが、物語自体はあくまでフィクションである。
  Wiki:ゴルゴ13



そしてmomorexこと管理人は最初から読みたくなり、月曜の会社帰りに単行本1冊、火曜の帰りに3冊、金曜以降は10冊ずつ買って帰り、毎夜読みふけることになる。社会人であればこその振る舞いだ。
以後、管理人はCIAFBI国家の陰謀などに傾倒し、映画を観る際などにもそれらが大きく影響するようになる。
が、幾度とあった引越しによりゴルゴ13の入った段ボールは闇に消え、行方が分からない。
管理人は今この記事を書きながら、また1巻から集めてやろうか!などとうそぶいている。

ちなみに当ブログでは、時々ゴルゴが出没する 背後には気をつけてもらいたい。


■コブラ寺沢武一 (連載1978~1984)




何をきっかけに読み始めたのかは覚えていない。
しかし、かつて日本に(おそらく)無かったアメコミ仕様の登場人物と彩色に心を奪われ、宇宙海賊の冒険にはまっていった。これもアニメは受け付けられず原作本のみが好きだ。ファンの方には申し訳ないが、アニメになると人物、特に女性の妖しさが無くなって安っぽくなってしまう。
なんですか、映画『ハイテンション(2006)』のアレクサンドル・アジャ監督の実写映画化実現に向けて話が進んでいて、2013年公開予定だとか。この監督は「コブラ」が大好きらしい。公開されれば一応、観に行くかな。


イメージコンセプトポスター


タランティーノ監督『キル・ビル(2003)』アイパッチのヒットマン/エル・ドライバー(ダリル・ハンナ)を見ると、いつもこの『コブラ』に出てくる敵方の女(名前失念)を思い出す。
持っていたのは少年ジャンプに掲載された(1978~1984年)ものの単行本かな。家族である青年Aの本棚に今もあるはず。今度取り返してこよう。



■AKIRA大友克洋 (連載1982~1990)




自宅の本棚に、赤や黄色や紫のこの派手な本が並んでいる人も多いのではないか?
「健康優良不良少年」金田と鉄雄。彼らを取り巻くあらゆる登場人物が全て濃いキャラクターで、一度読んだら忘れられない。劇場用アニメもヒット。だが、やはり自分は原作派。
この作品も『マッドマックス(1979)』同様、コアなファンが多い。
ファンは日本国内にとどまらず、海外にも多数おり、映画『マトリックス(1999)』にも影響を与えている。
この『AKIRA』もハリウッドで実写映画化の話が随分前から出ているが難航していて一進一退の状態。



■るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-和月伸宏 (連載1994~1999)




このコミックを通じて、明治時代に思いをはせたあの頃-。
最終巻まで読んだ後、剣客に興味を持ち時代をさかのぼって、池波正太郎著「剣客商売」を読破したのもこの頃。
なんだろう。他のものにハマっていた時よりも、平和で静かな時間が流れていたように思う。
気のせいかな。




好きな漫画は?と聞かれたら間違いなく上の4つから答えるだろう。
そんな事に時間を使えていた頃。うらやましい・・・。
これらと前後してハマった海外ドラマ「Xファイル」や「ツインピークス」。
今度は「海外ドラマ再考」なんかを書こうかな。

ブログを始めて3ヶ月。
こうやって管理人の道は続いていく-。

ではまた

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『人喰い人魚伝説』(2000/TV Movie) - She Creature -

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伝説の人魚が牙をむく

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■人喰い人魚伝説 -She Creature-■
2000年TV映画/アメリカ/89分
監督:セバスチャン・グティエレス
脚本:セバスチャン・グティエレス
製作:ルー・アーコフ他
音楽:デヴィッド・レイノルズ
撮影:トム・キャラウェイ
出演:カーラ・グギーノ(リリー)
   ルーファス・シーウェル(アンガス)
   リア・キルステッド(人魚)



解説:
伝説の人魚が自分を見世物にしようとした興行師一行を次々襲うサスペンス・ホラー。オリジナルは56年の「怪物の女性/海獣の霊を呼ぶ女」。監督は「裏切りのKiSS」のセバスチャン・グティエレス。出演は「スパイキッズ」のカーラ・グギーノと「ROCK YOU![ロック・ユー!]」「ダークシティ」のルーファス・シーウェル。
 (allcinema)

あらすじ:
SeeCreature_0820世紀に入って間もなくの頃のアイルランド。興行主アンガスはサーカスや偽物の「ゾンビ、人魚」などを客に見せる見世物小屋を運営していた。明日は出稼ぎ先のアメリカに出発という前夜、なりゆきから小屋に来ていた奇妙な老人の屋敷に人魚役の恋人リリーと一緒に招かれた。
「人魚は本当にいる。妻は人魚に殺された」とおかしな話を始めた老人。最初はバカな話と取り合わなかった2人だったが、では、と奥の部屋に案内され、水槽の中の鎖で繋がれた人魚を見せられる-





決してB級ホラーではございません。
TV映画ではあるけれど、きちんと作られ、俳優も豪華なゴシック・ホラーとなっております。

まず設定は1900年初頭のアイルランド。
街には馬車が通り、海には帆船。一般大衆にとっては、まだろうそくの時代だ。
アイルランドでは少し前に大飢饉がおき、多数のアイルランド人がアメリカ大陸へと移住している。
本作のアンガス達一行も一山当てにアメリカへ旅立とうとしていた。しかし出し物はいまいちパッとしない。そこに天から降ったような本物の「人魚」を見せられ、目がキラキラ。
その目がキラキラからギラギラになり、物語は興業一家を破滅へと誘っていく-。

元から目がキラキラの興行主アンガス ルーファス・シーウェル
SeeCreature_04決して人は悪くないが、欲に負けてしまって老人の屋敷から「人魚」を盗み出してしまった。あれほど老人が忠告したのに_。
演じたのはちょこちょこ見かけるルーファス・シーウェル。
イギリスの俳優で、ブロードウェイの舞台にも立っている。映画では『ダークシティ(1998)』『ROCK YOU!(2001)』『ツーリスト(2010)』などに出演。最近のドラマ『ダークエイジ・ロマン 大聖堂(2010)』では途中まで主役のトム役を、『ローマ警察殺人課アウレリオ・ゼン 3つの事件(2011)』では主役を演じた。

恋人リリー カーラ・グギーノ
SeeCreature_09不吉な予感がするからと、「人魚」を連れて行くのを止めたリリー。船が出帆してからは何かと「人魚」の世話をした優しい彼女だったが-。
シン・シティ(2005)』では指を食われた囚われの女を演じたカーラ・グギーノ。本作でも人魚に喰われてしまうのか!?
最新作は『ニューイヤーズ・イヴ(2011)』のモリセット医師。



本作は1956年製作のアメリカ映画『怪物の女性/海獣の霊を呼ぶ女』のリメイク作。
なんともおどろおどろしいタイトルだが、こちらは人魚というよりも「半魚人」の恐怖を描いたモンスター映画だ。
この検索結果でだいたいイメージして頂けると思う。
内容は

海辺のロッジで新婚カップルが殺害され、現場には海草と奇妙な足跡が残されていた。精神科医テッドは、助手の美女を相手に怪しげな催眠実験を行う男をマークするが……。(映画.com)


というもので、1930~1950年代に量産されたモンスター映画の中の1本のようだ。
脚本家でもある監督セバスチャン・グティエレスは、本作『人喰い人魚伝説』の他にも『ゴシカ(2003)』『スネーク・フライト(2006)』の脚本も手がけている。



mermaid「人魚」を扱った作品は、アニメだと割とたくさんあるようだが、映画となると案外少ない。
有名どころはトム・ハンクス主演『スプラッシュ(1984)』。他にも香港映画『人魚伝説(1994)』、『愛しのアクアマリン(2006)』、『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉(2011)』などがあり、どれもファンタジーとして描かれ、人間界では立場の弱い人魚(女性)を守る男性をイメージされているように思われる。
しかし日本の作品でこんなものが
 『ザ・ギニーピッグ マンホールの中の人魚』1988年/監督、原作、脚本:日野日出志

 ※注)ファンタジーではありませんので、決して検索しないでください。



本作の人魚は元モデルのリア・キルステッドが演じており、非常に美しい。非常に美しいのだが、なぜかゾクっとする怖さがある。一つは表情のない顔のガラス玉のような目。そしてもう一つは美しいはずの人魚のしっぽだ。
SeeCreature_05通常、人魚のしっぽといえば「リトル・マーメイド」のアリエルや『スプラッシュ』の薄いレースのようなさらさらした感じを想像する。が、本作の人魚のしっぽは、なんていうか爬虫類や昆虫を思わせるもので、それが特に空中で動く様はまるで太い蛇のよう。それも二つに分かれている。

 おわかり頂けるだろうか。

それを船に持ち込んだアンガス。タイトルに「人喰い」と壮大なネタバレがあるからもうお分かりかと思うが、鎖から放たれたこの蛇人魚は人を襲いはじめ、船上は修羅場と化す。しかもこの人魚は人を操る技を持ち、船長を支配。かくして船はアンガスが夢見たアメリカではなく、恐ろしい場所へと舵を切る-。

おぉー。どうやらこの作品を定期的に繰り返し観たくなるのは、この「しっぽ」とゴシックの組み合わせのせいかもしれない。「見世物小屋」というのも何か悪いことをしているようで、一人で電気を消して観るのに適しているように思われる。
が、本作の最後部分はちょっと残念な『スピーシーズ』的B級臭が漂う。しかしそれに目をつぶっても、この「しっぽ」の造形にはあまりある恐怖がある。
「フランケンシュタイン」のゴシック作家メアリー・シェリーが出てくる映画、その名も『ゴシック(1986/ケン・ラッセル監督)』。本作はこんな感じの作品が好きな方にオススメしたい映画です。
■ゴシック -Gothic- (1986年/イギリス)
 監督: ケン・ラッセル
 出演: ガブリエル・バーン, ジュリアン・サンズ,
    ナターシャ・リチャードソン


1816年のある日、ディオダディ荘で『フランケンシュタイン』『吸血鬼』を生み出したという怪奇談義を舞台に繰り広げられる近代ホラー。監督は鬼才ケン・ラッセル。
スイス郊外にあるバイロン伯爵の壮大な屋敷にやって来た3人の客。詩人シェリーと愛人メアリー、彼女の義理の妹クレア。その夜、この屋敷の侍医でもあるポリドリと共にディナーパーティが開かれる。それは文学史上最も重大な一夜になる事を、未だ誰も知らなかった。
幻想と怪奇の世界を独特の映像美で綴る恐怖映画の傑作!! (Amazon)
このブログの記事『ゴシック』(1986)


これも久しぶりに観たくなってきた。しかしTSUTAYAには無いようだ。。
ではまた

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『ワイルド・アット・ハート』(1990) - Wild at Heart -

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頭を投げ捨てハートで感じろ

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■ワイルド・アット・ハート -Wild at Heart-■
1990年/アメリカ/124分
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:デヴィッド・リンチ
原作:バリー・ギフォード
製作:モンティ・モンゴメリー他
製作総指揮:マイケル・カーン
音楽:アンジェロ・バダラメンティ
撮影:フレデリック・エルムズ
出演
ニコラス・ケイジ(セイラー)
ローラ・ダーン(ルーラ)
ダイアン・ラッド(マリエッタ)
ハリー・ディーン・スタントン(ジョニー)
ウィレム・デフォー(ボビー)
J・E・フリーマン(サントス)
クリスピン・グローヴァー(デル)
イザベラ・ロッセリーニ(ペルディータ)
シェリリン・フェン(交通事故の女性)
シェリル・リー(良い魔女)
ジャック・ナンス(ポージス・スプール)

解説:
デヴィッド・リンチ独特の、暴力・死・セックスといったモチーフはそのままにして描いたバイオレンス・コメディ。強烈な色彩、タバコや炎の凄まじい程のクローズ・アップ、強調されたノイズと音楽の融合など、様々な映画的手法を駆使して“リンチ・ワールド”を展開している。
 (allcinema)

あらすじ:
Wild at Heart 002アメリカ南部。セイラーは恋人ルーラの母親マリエッタに理由も分からず忌み嫌われていた。「殺してやる」とまで宣言されていたセイラーは、ある日差し向けられた殺し屋を反対に殴り殺してしまう。どこまでも2人の仲を引き裂こうとする母親から逃げるため、セイラーの出所を待ってカリフォルニアへ逃避行する2人。しかしマリエッタはあきらめず、娘を取り返すため愛人の探偵に2人を追わせる。が、なかなか埒があかないことに業を煮やしたマリエッタは、昔の愛人を使って暗黒街の顔役にセイラー殺しを依頼するが-





セイラーとルーラ ふたりの熱いハートは 荒野を焼きつくす。

デヴィッド・リンチ1990年の監督作。
有名な代表作の一つ『ツイン・ピークス』パイロット版が1989年、シリーズが1990~1991年なので、ほぼ同じ頃に撮られた作品。他監督作に比べて比較的分かりやすい内容だ。

テーマは「愛と呪縛」。
恋人同士、母と娘、母と娘の恋人、母と母の愛人-。あらゆる人間関係における愛とその束縛についてを描いている。
娘への異常な執着を示す母親は「悪い魔女」に例えられ、どこまでも2人を追っていく。が、しかしそれは娘への純粋な愛情からの行動ではない。娘がどうして「悪い魔女」の高笑いが耳から離れないのか。それには理由がある。


セイラー ニコラス・ケイジ
Wild at Heart 007蛇皮のジャケットをこよなく愛するセイラー。
このジャケットは彼にとって「魂の自由を信じる俺って人間のシンボルだ」。
ワイルドなハート」を持つと言うのと反対にジャケットに自分の個性を封じ込め、大事にしているところが面白い。
恋人ルーラのことも深く愛しているが、‘愛している’という割に、何度ルーラに‘セイラー’と叫ばせ、心配をかけていることか_。
親はいないも同然で育ち、ヤクザものの運転手をしていた。その頃起きたある出来事が原因でルーラの母親にとって邪魔な存在となっている。過去の呪縛がなかなか解けないセイラー。ルーラの愛で自由になることはできるのか。

演じたのはニコラス・ケイジ。本作内のプレスリーの歌も彼が歌っている。
ナショナル・トレジャー(2004)』などで晴れて子供も観る映画に出演したが、それ以前は本作『ワイルド・アット・ハート』も含め、少し変わった映画に出ることが多かった。
自分が始めて知ったのは『バンパイア・キッス(1988)』。バンパイアになったと思い込んでしまったエリートサラリーマンの狂気を描いた作品。かなりキレている役で、自分にとってニコラス・ケイジといえば、このイメージが強い。残念ながら、DVDにはなっていないようだ。
他にも『リービング・ラスベガス(1996)』『8mm(1999)』『ロード・オブ・ウォー(2005)』なんかがオススメです。

ルーラ ローラ・ダーン
Wild at Heart 003束縛する母親を嫌い、全てを捨ててセイラーと逃避行の途へ。
セイラーへの愛を惜しみなく表現するルーラ。だが彼女も決して幸せな子供時代では無かった。セイラーと出会うまでの様々な記憶が彼女を苦しめ、様々なイメージとなって目の前に現れる。その一つが「悪い魔女」だ。高笑いしながら、ほうきにまたがり追ってくる。それらを忘れさせてくれるのはセイラーだけだった。
『ジュラシック・パーク(1993)』のローラ・ダーンは本作以外にもデヴィッド・リンチ監督作『ブルーベルベット(1986)』、『インランド・エンパイア(2006)』に出演している。独特の魅力を持った女優さんだ。本作ルーラの母親マリエッタ役のダイアン・ラッドが実の母親だと知って驚いた。



この作品で面白いのが、この恋人達の会話のシーンだ。
Wild at Heart 014他の登場人物と違って、とても礼儀正しく、なんだかシェイクスピアの舞台的な感じを受ける。2人の会話だけ聞いていると内容はともかく、話し方がとてもバイオレンスな映画だとは思えない穏やかさがある。これは何を狙った演出なのか。悪魔のごとき形相の殺し屋と対比させるととても面白い。
 この悪魔の人は『ツイン・ピークス』ローラの母親役グレイス・ザブリスキー



この2人を取り巻く登場人物は一癖も二癖もある人ばかり。
あわせて逃避行している道中で出会う人々も只者ではない、リンチ監督らしい人々だ。

Wild at Heart 001Wild at Heart 017Wild at Heart 009Wild at Heart 010Wild at Heart 016
マリエッタ
ルーラの母親
探偵ジョニー
マリエッタの愛人
 
サントス
ヤクザ者
デル
ルーラの従兄弟
殺し屋
Wild at Heart 013Wild at Heart 018Wild at Heart 019Wild at Heart 020Wild at Heart 022
交通事故の娘殺し屋の娘モーテルの客モーテルにいた
ヤクザ者
いい魔女


他にも、たとえ数秒しか映らなくても、決して手を抜かれていないおかしな人が出てくるので、是非リンチワールドを楽しんで欲しい。その人達の存在に意味があるのか、ないのかは、、、、分かりません




「愛と呪縛」からの逃避行で始まるこの作品は、「愛」を受け入れ、「呪縛」から解放され、束縛される事さえも受け入れ背を向けず、真正面から人を愛せるようになったところで終わる。道中で出会う様々な人々や、ルーラの話に出てくる人や事件は、セイラーとルーラが自ら囚われている人や物だ。それら不幸な過去を断ち切り、前を向いて目の前の人をしっかり見つめることが出来たとき、2人に本当のハッピーエンドが訪れた。それは、悪い魔女=母親が写真立てから消えたことからも分かる。
人を呪い、自分の罪を無かったことにしようと企んだ母親は、娘を失い髪を振り乱したまま泣き続け、自分を哀れんだ姿で一生を終えることになる。

ではまた

Wild at Heart 023

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「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」(2011/TV) ~WOWOWで観る

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こう見えてコスチュームもの映画、ドラマも好きな管理人momorex。
5月11日(金)からWOWOWで放送の始まった「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」第1話をしっかりチェック。

The Borgias_032


アカデミー賞に輝く名優 J・アイアンズ主演。
史上最もスキャンダラスなローマ教皇アレクサンデル6世と
その一族の愛と欲望を描いた歴史ドラマ。


■ボルジア家 愛と欲望の教皇一族 -The Borgias-■
TVドラマ2011年~/カナダ・アイルランド・ハンガリー
監督:ニール・ジョーダン、サイモン・セラン・ジョーンズ他
企画:ニール・ジョーダン
脚本:ニール・ジョーダン
製作総指揮:ニール・ジョーダン、マイケル・ハースト他
出演
ジェレミー・アイアンズ(ロドリーゴ・ボルジア)
フランソワ・アルノー(チェーザレ・ボルジア)
ホリデイ・グレインジャー(ルクレツィア・ボルジア)
ジョアンヌ・ウォーリー(ヴァノッツァ・カッターネイ)
ロッテ・ファービーク(ジュリア・ファルネーゼ)
デヴィッド・オークス(ホアン・ボルジア)
ショーン・ハリス(ミケロット)
エイダン・アレクサンダー(ホフレ・ボルジア)
コルム・フィオール(ジュリアーノ・デッラ・ローヴェレ)
サイモン・マクバーニー
デレク・ジャコビ(オルシーニ)

解説:
“史上最もスキャンダラスなローマ教皇”、アレクサンデル6世とその一族。彼らが欲望のために権力をふるった時代をドラマティックに描く、空前絶後のセンセーショナル大河エンターテインメントが、今回の放送が日本初上陸となる本作だ。全米では第2シーズンに突入する最新ヒットドラマ。企画・製作総指揮と第1・2話の監督、全話の脚本を『クライング・ゲーム』『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の鬼才N・ジョーダン監督が手がけたのも話題。


あらすじ:
The Borgias_000猛烈な野心をもってローマ教皇の座を目指すスペイン出身のロドリーゴ・ボルジア枢機卿は、前代の教皇インノケンティウス8世が崩御した後、卑怯なやり方を使ってコンクラーベ(教皇選挙)を勝ち抜いて即位し、教皇アレクサンデル6世となった後も周囲を権力で支配しようとする。教皇でありながら美しい愛人を持ち、一族を使いあらゆる手段を使って教皇の座を守ろうとする。愛、権力、暗殺、、、それぞれの野望がいま動き出す-
 (WOWOW)




ロドリーゴを首長とするボルジア家。なぜにこれほどまでの権力を欲するのか。
政財界を代表するあらゆる社会の中でトップに君臨し、力を手に入れたいと願う人間は、古今東西を問わず存在し続けている。
日本の時代劇でたまに登場する「越後屋、おぬしも悪よのう」の「越後屋」に相当する影で陰謀を操る悪いやつ。中世などの時代設定で作られた海外映画、ドラマにはこの悪の設定として「枢機卿様、司教様」が登場することがある。
 参照1: 「ダークエイジ・ロマン 大聖堂(2010)」
 参照2: 「THE TUDORS~背徳の王冠~(2007)」
 参照3: 『マリー・アントワネットの首飾り(2001)』

ほとんどが権力を欲するあまり、結局は自爆するという設定が多いが、なぜ「神の前では皆等しく・・・」などが教義の宗教界にも権力なるものが存在したのか?

ローマ教皇 日本では「ローマ法王」と言われることが多い。
カトリック教会の最高権威者であり、ローマ司教として、初代ローマ司教、第一の使徒ペテロの後継者。そのため教皇の座は聖ペテロの聖座と呼ばれる。枢機卿達の選挙により選出され、ペテロがキリストから天国の門の鍵を預けられたことから、地上でキリストを代理する。歴史的には4世紀から全教会に対する首位権が主張された。精神の指導者であるが、中世・ルネサンス期には広大な教皇領を領有し、君主のような世俗的権力も保持していた。 (WOWOW)


枢機卿というのはローマ教皇に次ぐ高位の聖職者で、教皇の自由意志で任命され、教皇の助言にあたる。
The Borgias_011敬称は猊下(げいか)。そして現教皇が崩御、もしくは退位の際には、この枢機卿団の中から次の教皇を枢機卿団自ら選挙(コンクラーベ)で決定する。
選挙と言えば聞こえはいいが、このドラマの冒頭部分で繰り広げられたように、教皇に選ばれるためには裏側での謀略が大事なポイントだ。教皇が絶大な権力を持っていた中世・ルネサンス期のコンクラーベは政治的駆け引きの場だった。
コンクラーベ(ラテン語: Conclave)とはラテン語で「鍵をかける」の意味。
選挙参加者は外部との接触を一切断たれ、システィーナ礼拝堂に寝泊まりし選挙を行う。選挙会場は文字通り外から鍵をかけられた。
トム・ハンクス主演の映画『天使と悪魔(2009)』でも詳しい様子が描かれている。



イタリアの時代背景とローマ教皇
栄華を誇ったローマ帝国が、異民族の侵入や内戦により徐々に崩壊へと向かっていた3世紀。
皇帝コンスタンティヌス1世(在位306年~337年)は帝国の再建を試みており、内戦においてキリスト教徒の助けを借りたこともあり、313年ミラノ勅令を発してキリスト教を公認した。380年には、テオドシウス1世によってキリスト教が国教とされた。
それ以前は、ご存じの通りキリスト教徒は迫害を受けていた。キリストが十字架に架けられたのもローマ帝国の手による。

その後もローマ帝国は異民族の侵入(ゲルマンの民族大移動など)や内戦が続き、小さな国に分割、独立しては統合される時代が続く。しかし、そんな中でもラヴェンナから、教皇の居るローマにかけての南北に細長い部分は、8世紀初頭まで征服できなかった。こうして後の教皇領となる部分が出来上がった。

中世の時代、このような状況下でカトリック教会は唯一安定した組織だと見なされ、大きな政治権力を握るようになった。ローマにいる教皇はイタリアの一部を直接統治していたが、その影響力はイタリア全域にとどまらずキリスト教化されたヨーロッパ中に及んでいた。

Italia_149415世紀末、ヨーロッパでは小氷期と呼ばれる寒冷気候が一段と悪化。人々は飢饉やペストなどの伝染病に苦しむが、国々は助け合うのではなく、戦争により争い奪い合っていた。ルネサンス期のイタリアも例外ではなく、ミラノ公国、ヴェネツィア共和国、フィレンツェ共和国、教皇国家、ナポリ王国の5大国が争っていた。死が身近にあるこの時代、宗教的指導者である教皇には、広く世界の人々に救いを与えることが期待されていた一方で、戦争さえ辞さない一国家の元首として有能な政治家であることが求められた。
 (Wiki/WOWOWより抜粋)

こうしてみると、ローマ教皇の立場というのは単なる「カトリック教会の最高権威者」であるだけではなく、ヨーロッパ全体の統治者であるとも言える。この絶大な権力を手に入れるため、様々な謀略を尽くし、教皇の椅子を勝ち取ったロドリーゴ・ボルジアだが、ドラマで描かれていたような謀(はかりごと)ぐらいでは、手に入れることは出来なかっただろうと想像できる。実際は何年も前から計画され、着々と進められていたのではないだろうか。
Pope_alexander_VI
アレクサンデル6世

ロドリーゴ・ボルジアは1455年~1458年在位の教皇カリストゥス3世の甥にあたる。
The Borgias_024叔父カリストゥス3世に枢機卿として大抜擢され、その後、5人の教皇に仕えることになる。叔父在位の1457年から教皇になるまで、教皇に次ぐ権力を持つ「副尚書(ふくしょうしょ:副長官・副首相などの意)」を勤め、経験と富、人脈を形成していった。叔父の権力、富、(おそらく)女を間近で見て過ごし、いつかは自分だと常々野心に燃えていたことであろう。
当時、堕落していたのはロドリーゴに限らず、高位聖職者達のモラルは堕ちきっており、多くの者が金と女に情熱を傾けている時代であった。

ドラマ内で教皇に選任された直後、今後は公人として生きることになるから、今までのように一緒に生活は出来ないと妻に話す。すると妻は
 あなた、浮気はしないでくださいよ。
 私も清貧の誓いをたてようかしら
と返す。
ロドリーゴが反応したのは「清貧の誓い」。「そんなバカらしいっ!」と言ってのける。
えっ あなたは聖職者、それも教皇様ですよね?




第1話はロドリーゴ・ボルジアが聖職売買をも使い、アレクサンデル6世として教皇についたところから始まる。
しかしこの魅力的な権力の座は、既に他の枢機卿から狙われており、いきなり家族もろとも暗殺されそうになる。
それを事前に察知し、すんでの所で止めた上、暗殺者を味方に寝返らせる影の主役が息子チェーザレ・ボルジア

チェーザレ・ボルジア
Cesareborgia聖職者として登場するが、その実は軍人であり政治家。大学で法律を学び、武芸全般にも秀でていた。
1492年8月に父・ロドリーゴがアレクサンデル6世として教皇の座を得たこの年に、チェーザレはバレンシア大司教として異例の抜擢を受け、翌年にはバレンシア枢機卿に任命されている。
しかし彼は聖職者として生きるより、軍人として使命を全うしたいと考えており、父親であるアレクサンデル6世にも度々願い出ていた。
ドラマでもちらりと話が出てくるが、ローマ教皇とフランス国王シャルル8世の確執。チェーザレはフランス軍侵攻時には間に立ち、特使として行き来している。その後、フランス国王ルイ12世の治世時には、枢機卿及びバレンシア大司教の地位を返上し、フランスに滞在(これにはアレクサンデル6世とルイ12世の裏での密約があったとされている)。かねてからの願いだった軍人としての途を行くこととなる。
一方で、彼は目的のためには手段を選ばない冷酷な政治家とも表される。
ドラマ第1話で既にそれは証明されており、寝返らせたばかりの暗殺者に元の雇い主であるオルシーニ枢機卿を毒殺させている。

The Borgias_028 The Borgias_012
暗殺者ミケロットと第一のドラマ内犠牲者オルシーニ枢機卿




ドラマに出てくるボルジア家の子供達は4人。
The Borgias_030
右上から左回りに チェーザレ、ホアン、ルクレツィア、ホフレ
兄弟仲は良く、とりわけチェーザレとルクレツィアは妙な噂が出るほど、仲が良かった。
子供達、特にルクレツィアは父アレクサンデル6世によって、一族の繁栄のため政権闘争に翻弄されることになる-。

子供達の母親ヴァノッツァ・カッターネイ
The Borgias_021教皇アレクサンデル6世の内縁の妻。
1460年のマントヴァでの教会会議において、当時枢機卿であったロドリーゴ・ボルジアと出会う。2人は恋仲になったが、ロドリーゴの聖職者という立場上、正式に結婚する事はできなかった。
しかし2人が事実上、夫婦で子供がいることは公然の秘密であり、ドラマの中ではアレクサンデル6世の即位式において家族の位置づけで扱われている。





ニール・ジョーダン
Neil_Jordanこのドラマ化を企画、全ての脚本を書き、製作した。
アイルランドの映画監督・脚本家。
ゴシック・ホラーや歴史物、恋愛物などを手がけ、ハリウッドで活躍するアイルランドを代表するストリーテラーである。
『クライング・ゲーム』でアカデミー脚本賞を、『マイケル・コリンズ』でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を、『ブッチャー・ボーイ』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞している。
↓の作品を確認すると、結構好きで観ていた映画が多かった。

■主な監督作品
 『狼の血族』 The Company of Wolves (1984)
 『モナリザ』 Mona Lisa (1986)
 『プランケット城への招待状』 High Spirits (1988)
 『俺たちは天使じゃない』 We're No Angels (1989)
 『クライング・ゲーム』 The Crying Game (1992)
 『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』 Interview with the Vampire: The Vampire Chronicles (1994)
 『マイケル・コリンズ』 Michael Collins (1996)
 『ブッチャー・ボーイ』 The Butcher Boy (1997)
 『ことの終わり』 The End of the Affair (1999)
 『ギャンブル・プレイ』 The Good Thief (2002)
 『プルートで朝食を』 Breakfast on Pluto (2005)
 『ブレイブ ワン』 The Brave One (2007)

ジェレミー・アイアンズ(ロドリーゴ・ボルジア)
The Borgias_026イギリスの俳優。
1988年公開のデヴィッド・クローネンバーグ監督作 『戦慄の絆』 で演じた双子役が高く評価され、以降はハリウッド作品にも多数出演。1990年公開の 『運命の逆転』 でアカデミー主演男優賞を受賞。
最近はコスチューム映画には欠かせない存在となっていますね。
1948年生まれ。




第1シーズンは全9話。WOWOWの放送はまだ始まったばかり。

 二ヶ国語版  毎週金曜よる11:00
 字幕版    毎週月曜深夜0:10
 二ヶ国語版(再) 毎週金曜午後2:00
   公式サイトはこちら

ルネサンス期のものは初めてだけど下調べも出来たし、観ていこうと思ってます。
WOWOWの『ローマ』も面白かったしね。

ここでちょっと情報を
IMAGICA でも同じ素材の海外ドラマ「ボルジア 欲望の系譜」が6月12日(火)23:00から放送開始する。6月3日(日)23:00から第1話の先行放送あり。

平行して観たら、混乱するかなぁ。

ではまた

The Borgias_036




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『女と女と井戸の中』(1997) - The Well -

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女達は井戸に何を捨てたのか

The Well 016


■女と女と井戸の中 -The Well-■
1997年/オーストラリア/110分
監督:サマンサ・ラング
脚本:ローラ・ジョーンズ
原作:エリザベス・ジョリー
製作:サンドラ・レヴィ
製作総指揮:モーリーン・バロン他
音楽:スティーヴン・レイ
撮影:マンディ・ウォーカー
出演:
パメラ・レイブ(ヘスター)
ミランダ・オットー(キャサリン)
ポール・チャッブ(ハリー)

解説:
荒涼としたオーストラリアの田舎を舞台に、女性二人の愛憎、葛藤を、寓話的に描いた一編。監督はこれが長編第1作となる女性、サマンサ・ラング。製作はサンドラ・レヴィ。脚本は「ある貴婦人の肖像」のローラ・ジョーンズ。原作はエリザベス・ジョリー。オーストラリア・アカデミー賞主演女優賞、脚色賞、美術賞を受賞。
(キネマ旬報)

あらすじ:
The Well 007オーストラリアの人里離れた荒野で農場を営んでいる足の不自由な中年女性ヘスター。長い間、高齢の父親の面倒もみており、結婚もしそこねた。人との触れあいは週に一度訪ねてくる仲介業者のハリーだけという日々だった。
そんな毎日に新しく雇った若い家政婦キャサリンがやって来る。徐々に心を開き、若い娘に複雑な感情を持ち始めたヘスター。父親が亡くなり、遺産を相続したヘスターはキャサリンと面白おかしく過ごす毎日を夢見るが-





最近の映画でジョージ・クルーニー主演『ヤギと男と男と壁と -The Men Who Stare At Goats-(2009)』という作品があったが、このなんとも不思議なタイトルを見たとき、真っ先に頭に浮かんだのが本作『女と女と井戸の中』。日本向けタイトルのセンスに惹かれて以前観賞したことを思い出し、録画して大事にとっておいたものを再度観てみた。


登場人物の一人 中年女性ヘスター
The Well 004彼女は片足が不自由で内向的。人里離れた広大な牧場で、父親と住み込みの家政婦モリーとの3人だけの生活だ。化粧っけもなく服装も地味。家にはテレビもなく、俗世間とはほとんど触れることはない。聴く音楽はクラシックで、まるで100年も前の女性のようだ。
そこへ、今時の若い娘キャサリンが住み込みの家政婦として雇われる。
最初はきちんと仕事が出来ないキャサリンにいらいらしていたヘスターだったが、天使のような歌声を持ち、踊るキャサリンに徐々に心を開き、惹かれ始める。ヘスターにとってそれは、妹のようであり、娘のようであり、こうあって欲しかった、自分の無くした少女時代の幻のようであった。

少女のように屈託のないキャサリン
The Well 020親を亡くし施設にいた娘。ヘスターに家政婦として引き取られるが、まるで路地で泣いていた小さな子猫が拾われてきたようだ。足音をしのばせヘスターの部屋を探検し、雨が降れば無邪気に喜ぶ。ブロンドの髪は天使の羽根のようにひらひらしてヘスターの目を奪う。おとぎ話の主人公のよう。
そんな彼女が夢物語を本当のことのように語るのなんかはお手のもの。
ヘスターは家政婦を手に入れたのか?妹を手に入れたのか?いった何を家に連れ帰ったのか?


この2人の登場人物ヘスターとキャサリンはこれでもかというほど、対比させて描かれている。
 背の高いヘスター ←→ 低いキャサリン
 ダークブラウン長い髪のヘスター ←→ ブロンド短髪のキャサリン
 低い声のヘスター ←→ 高い声のキャサリン
 古いズタ靴のヘスター ←→ おしゃれなブーツのキャサリン
 足をひきずり一歩一歩歩くヘスター ←→ 舞うように踊る裸足のキャサリン

ヘスターにとってキャサリンは、少女の頃大事にしていたキラキラの宝物のようだ。
少女の宝物というのは、自分だけの物であり、自分だけのために存在する物であり、他の何物にも代えられない。
それを無くすことは耐え難く、自分の一部がちぎれて無くなることにも匹敵する。
広い荒野と奇岩、年老いた父親だけが背景の毎日に飛び込んできた宝物。ヘスターはキラキラ光るそれを今度こそ何に代えても決して無くしたくないと思ったことだろう。

対してキャサリンはどう思っただろうか。
今までは施設に入れられ、閉じ込められたような毎日にうんざりしていただろう。それでも友達や音楽や楽しみはあったはず。ヘスターに雇われ急に生活環境は変わったが、その中で楽しみを見つけることは出来ただろうか。順応力はありそうだが、人に媚びることに慣れており何にでも興味を持つ若いキャサリン。それをヘスターはいつまで我慢できただろうか。


本作は最初から終わりまで、映像がブルーがかったものに調整されている。
この「ブルー」という色は心理学的には
 ・平和とコミュニケーション
 ・興奮を抑える
 ・ぐっすり眠りたい時
 ・食欲減退
などに効果があるそうだ。
プラスイメージとしてのもので「さわやか、涼しさ、幸福、活発、冷静、知的、誠実、信頼」となる。

が、反対に気分が落ち込む事を「ブルーになる」などとも表現する。人がブルーに目がいくときは
 ・何かを抑圧しているとき
 ・一人で抱え込んでいるとき(責任、ストレス、怒りなど)
 ・自信を付けたいとき
などだそう。これらはマイナスイメージで「憂鬱、孤独、未熟、保守的、冷淡、義務、切ない、消極的」となる。
この相反するイメージがブルーには詰め込まれている。

The Well 017そしてこの作品『女と女と井戸の中』の2人の登場人物は、まさしくこのブルーのイメージが象徴するものを持ち、その中を右往左往することになる。決してオレンジ(活気、家庭、攻撃)や(華やか、女性、暴力、興奮)ではない。
では、ヘスターがマイナスイメージで、キャサリンがプラスかといえば、そんな単純に分けられるものではなかった。




保守的で孤独だったヘスターの未熟さが暴露されたとき、未熟で活発なキャサリンの冷淡さが暴かれたとき、この物語は一つの終わりを迎える。「一つの終わり」と表現したのは、この物語はまだ続いていくからだ。今までにない自分を知ったとき、2人は別々の人生を歩むことになるが、それは決して「幸せ」と「不幸」に分けられたわけではない。
生活の糧を失ったヘスターが最後に見せる表情には、これからの新しい人生が開かれている。対して若いキャサリンはどうだったか。今まで見たこともないような大きなものを手に入れたが、その顔には不安がへばりつき、口から出る言葉には誠実さのかけらも無い。

女と女と井戸の中-。
2人の持っていた大事なものを放り込んで捨てた先は「井戸」であり、隠された未来が眠っていたのも「井戸」であったのだ。

ではまた

The Well 019 

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『ラバー』(2010) - RUBBER -

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この殺人タイヤに気をつけろ!


Rubber (11)


僕はロバートだ。
ある日、砂漠のど真ん中で一人目覚めた。
半ば砂に埋められて、うち捨てられたような状態だった。
事件に巻き込まれたようだが、今までの記憶が無い。どうしてここにいるのか覚えていない。
名前だけは覚えていたのでよりはましだとは思ったが。

水を求めて砂漠をさまよった。身体がほてってくる。
頭にあるのはキラキラ光る透明な水だけだ。それだけだ。
水を求める僕を邪魔する物は何であっても許さない。全て蹴散らし、踏みつぶす!

...どうしても踏みつぶせない物を発見した。
踏みつぶそうにも、すべってうまくいかない。色々試したが駄目だった。
落ち着いて、少し離れて考える。
どうしても潰したい。どうしても破壊したい。

破壊せよ。破壊せよ!破壊せよ!!   ・・・・Bang!!!

自分の使命が分かった。
自分が何物なのかは、もはやどうでもいい。
僕は破壊者だ。破壊者ロバートだ。
僕の邪魔をするヤツは全てこの力で破壊してやる。
世の中の全てが僕の前にひれふす。人間だとて例外ではない。


Rubber (5)




■ラバー -RUBBER -■ 2010年/フランス/82分
 監督・脚本・音楽・編集・撮影:クエンティン・デュピュー
 出演:ロクサンヌ・メスキーダ


映画『E・T』でエイリアンが茶色なのも
映画『ある愛の詩』で2人が愛し合うことになるのも
映画『JFK』で見知らぬ人に大統領が暗殺されるのも
映画『悪魔のいけにえ』で殺人後、血の付いた手を洗うシーンが無いのも
映画『戦場のピアニスト』でピアノの天才が虐げられるのも
特に理由はない。

「偉大な映画には必ず理由無き要素が入っている。」


Rubber (6) 

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『華麗なる晩餐』(2008) - Next Floor -

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その晩餐どこまで続くの

Next Floor_07


■華麗なる晩餐 -Next Floor-■
2008年/カナダ/12分
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本:ジャック・ダヴィッツ
出演:
デニス・セント・ジョン(ゲストのひとり)
エマニュエル・シュワルツ(ウェイターのひとり)

解説:
一見豪華絢爛な晩餐会で次々と異常事態が……。「灼熱の魂」のD・ヴィルヌーヴ監督が同作品に先がけ、第61回カンヌ国際映画祭でカナルプリュス賞を受賞した衝撃の短編。
 (WOWOW)

あらすじ:
Next Floor_02上流階級の豪華絢爛な晩餐会。美食家のホストとゲスト達がその食事に舌鼓を打っていた。もくもくと料理を運ぶウェイター達。談笑もせず、次々と平らげていく人々。
そこに地鳴りと共に異常事態が発生する!-




↓ネタバレしてます



12分の短編。
早く回るオープニングロールの後、給仕長のアップで始まる。
Next Floor_0112分しかないのに大丈夫?というほど給仕長の表情をアップで捉えている。
その表情がなんとも意地悪だ。見ているものを完全に小馬鹿にしており、蔑んでいる。軽蔑の眼差しだ。
で、その視線の先はというと、雇い主で自称美食家の上流階級の人々だ。
観ているこちらもその人々に目をやると、、

Next Floor_03がっついている。。
上品さのかけらも無い。ガチャガチャとフォークを鳴らし、肉ばっかり次から次へと口へ運びほおばる。まるで豚だ。
ウェイターが続々と運ぶ料理も間に合わないほどだ。
豚、鶏、小さな鶏?、中身が脳みそのような貝?、臓物だらけのソースかけ?アルマジロ?鹿の丸焼きにサイの丸焼き?
普通であればとても食べられそうも無いものが混じっている。が、当の本人達は気にもしない。そして料理は、次々と運ばれてくる。

すると足下でおかしな揺れが始まった。最初はカタカタと鳴っていたが、突如地響きとなり、轟音と共に
Next Floor_04テーブルと美食家達を乗せ床が抜けた!
と、階下の床に着地。すかさず給仕長が指示を出す。
Next Floor
あわてて階下へ移動するウェイター達と楽団。ゲスト達がかぶった埃を払い、床を掃き、そして給仕する。
上流階級達は何事も無かったかのようにまた食べ始める-


Next Floor_10この作品は上の3番目、床が抜け、ウェイター達が階段を降り、また給仕を続けるという一連のシーンが12分の内10分くらい続く。それでも食べ続ける人々は異常で、ウェイター達も戸惑いを隠せない。
BGMとしてずっと低い太鼓のような音が鳴り、階段を降りるウェイター達は狩猟時の鬨の声のようなものを出している。一見贅沢な料理を出され、食べているのはホストとゲスト達だが、このBGMと鬨の声のせいで段々と、太らされ狩られて食べられようとしているのはこの人たちではないのかと錯覚してくる。
それを冷静に、薄ら笑いを隠しながら眺めている給仕長。
これは日頃のうっぷんを晴らしたい給仕長の白日夢なのか。

この短編の結末は、
一階、一階、落ちていたテーブルと人々が、ずーっと下の階まで一気に落ちていってしまう、というもの。着地した様子も聞こえない。驚いて大きく開いた穴を上から見下ろすウェイター達。そして給仕長の訳知り顔のアップで締めくくられる。

なんとも奇妙なお話だが、テンポ良く進んで(落ちて)いくので、まるで何かのCMのようだ。
贅沢な料理は丁寧に作られグロテスク。落ちては着地するシーンも見事で目を見張る。
台詞は給仕長の「Next Floor」のみ。しかし全ての登場人物は表情で語りかけ、考えていることが手に取るようだ。
..が、給仕長の考えていることだけがわからない。
解釈は観る人まかせ、全てが観客にゆだねられている。




自分の頭に浮かんだ言葉は 「狩猟民族の呪い
いくらなんでも食べ過ぎじゃ、というほど骨付き油付の肉を手で掴んで、がつがつ食べ続ける人々。
あれだけの量が胃に収まったとすれば、その分だけテーブルまわりが異常に重くなり、で床が抜けたのか?それも床が抜ける前、階下からその部分を見上げると油染みがじわぁーっと染み出していて、なんとも不潔。これはきっと必要以上に狩られ食べられ、捨てられて死んでいった動物たちの呪いに違いない。


ではまた

この作品はWOWOW「カンヌ国際映画祭2012」特集として2012年に放送された中の一作品です。
・華氏911
・イゴールの約束
キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-
・ナイト・トーキョー・デイ
・アイロン
・頭のない男
・神々と男たち
・終わりなき叫び
アンチクライスト
・インタビュー
・メガトロン
・BIUTIFUL ビューティフル
・華麗なる晩餐

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『冷たい熱帯魚』(2010)

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この素晴らしき世界


冷たい熱帯魚_00

■ 冷たい熱帯魚 - Cold Fish - ■
 2010年/日本/146分
 監督:園 子温(その しおん)
 脚本:園 子温
 製作:杉原晃史 他
 音楽:原田智英
 撮影:木村信也
 出演:吹越 満(社本信行)
    でんでん(村田幸雄)
    黒沢あすか(村田愛子)
    神楽坂 恵(社本妙子)
    梶原ひかり(社本美津子)
    渡辺 哲(筒井高康)
    諏訪太朗(吉田アキオ)



解説:
本作はその衝撃度からR-18指定ではあるが、逆に18歳以上だからこそ観ることが出来る「真の大人の映画」であり、久しく日本映画が忘れかけていた映画愛がここにある。監督自ら最高傑作と称しているこの猛毒エンターテインメント。観る者がどのように受け止めるか? 是か非か?
本作は鬼才・園子温の金字塔作品であると同時に、間違いなく2011年最初にしてNo.1の問題作である。
 
(公式サイトより)

あらすじ:
富士山の見える小さな町で小さな熱帯魚店を営む社本信行(しゃもと のぶゆき)。妻は3年前に病没し若い嫁を迎えたが、年頃の娘、美津子と折り合いが悪い。美津子は悪い仲間と外をうろつき、とうとうスーパーで万引きをして捕まってしまう。警察に突き出されそうになったところを、たまたまその場に居合わせたスーパー店長の知り合い、村田幸雄(ゆきお)がその場を納めてくれた。
地元で大きな熱帯魚店を営む村田。社本に同情した村田は、同業者のよしみから自分の店で美津子を預かり、仕事をさせながら立ち直らせてやろうと社本に持ちかける-





初めての邦画レビュー。
この作品を観終わって最初の一言-。  「えらいもん観てしもたぁ

いつもお邪魔させて頂いているalai Lamaさんのブログで園子温監督作『自殺サークル』をレビューされていて、自分も観たいと探していたが、なかなかレンタル出来ず。で、代わりに借りたのが本作『冷たい熱帯魚』。
なぜこれを選んだか。熱帯魚を飼っている変な女の子の話かなと勝手に推測し、自分も熱帯魚を飼っているからと(ハハ

洋画ホラーは大好きでよく観るのだけども、邦画は『女優霊』や『黒い家』以降苦手で避けて通っていた自分。
(「ほん○にあった呪いのビデオ」なんかは全巻観てるんだけど)
いつの間にか邦画ホラーもここまで来てたんですね。

よく言われることだけど、洋画のホラーはどんなにえげつなくてもエンターティメントとして、作り物として楽しめる。それが例え実際の事件に基づいているものだとしても。
でも邦画は違う。当たり前だが日本が、日本人が設定なのでとても身近に感じられ、まるで近くで、隣の家で、自分の家で起こっている出来事のように感じられ、日本独特のジメっと感もあいまって怖い

特に本作は実際にあった事件「埼玉愛犬家連続殺人事件」をベースにしており身近すぎる上に、こてこてのスプラッターで味付け。あ、違う。味付けではない。遺体の処理方法などは実際の事件とほぼ同じと思われるので、このスプラッター部分も一部はホントにあったこと。とても同じ人間の所行とは思えない


前置きはこのぐらいにして、登場人物について想像できる範囲でお話を。(ためになる付き)
熱帯魚店主 社本 信行
冷たい熱帯魚_01メガネをかけた大人しい、日本でよく見かけるタイプ。
最初の妻が病気で亡くなり、ややこしい年頃の娘がいるというのに若い後妻を迎える度胸はある。事なかれ主義の典型で、目の前の問題は見て見ぬふり。娘が万引きしてスーパーに呼びつけられるも自分が頭を下げるばかりで、娘に一言もしからないばかりか、娘自身に謝らせることもしない。ここで自分は「」っと思いましたね。
この様子を見ていた村田。いつ社本を取り込もうと思いついたのかは分からないけれど、これらの態度が決め手になったのは間違いないはず。親として、大人としてあまりに無責任で逃げ腰過ぎる。隣で一緒に頭を下げている嫁も、なんとか言えばいいのに。この作品で一番いらいらしたのは、このシーンかも。
がしかし、だからといって他人に何をされてもいいわけでは無い。嫁と娘に大事なことはなかなか言えないけれど、真面目に熱帯魚店を経営して働いている。その気持ちを理解してフォローしてくれる人さえ周りにいればいいわけだし。
その人が社本にとって村田だったのかもしれない。言いたいことをどんどん代わりに言ってくれて、ぐいぐい引っ張ってくれる。引っ張られる方向さえ間違ってなければよかったけれど...。
社本のもう一つの趣味「天体観測」。プラネタリウムで両脇に嫁と娘を座らせて、二人に「この生活も、今の状態も、何もかも、大好き!」と幸せ感一杯に言われる様子を妄想する。この作品で一番悲しいシーンだった。
子を持つからには覚悟せよ


大型熱帯魚店主 村田 幸雄
冷たい熱帯魚_03話題が豊富で、面白おかしくよくしゃべる下町のおじさん風。親父ギャグを連発するも憎めない。「ユキオちゃんに何でも相談してよぉ。」と懐が大きな所も。
がしかし、一皮むけばそれは、人の考え方を素早く見抜き、考えていることを素早くキャッチ。弱点をあっという間に手に入れる。包容力のある大人にも甘え上手な子供にも自由に変身することが出来る。恫喝だろうが、泣き落としだろうが、相手と時と場所によって自由に使い分ける事が出来る。ようするに詐欺師だ。
ただの詐欺師だけならば、盗まれるのはお金だけだろうが、この人は新種の連続殺人鬼でもある。
人を殺すことを「透明にする」と表現し、遺体さえなければ殺人事件として立件できないと、徹底的に遺体を処理。このあたりは実際の事件の犯人と同様に描かれている。
しかし例え遺体がないとしても、天涯孤独な人を選んで殺しているわけでもなく、周りで何人も行方不明者が出れば警察に目を付けられると思うんだけど、実際、この犯人はそこの所はどう考えていたんだろうか。自信とプライドで出来ているような人だから、絶対大丈夫と考えていたんだろうか。
確か、この「埼玉愛犬家連続殺人事件」の他にも同じような事件で不動産がらみのものがあったはず。そっちも同じようにいい人で信頼されていて、その立場を利用し騙してお金を奪い最後には殺す。ただこちらは遺体は埋めていただけなようだが。
アメリカなんかの連続殺人鬼は基本、被害者は見ず知らずの人を選ぶ。こういうタイプの殺人鬼は白人に多いとされている。日本では宮﨑勉がこのタイプだそうだ。
日本ではお金が絡んだ、この村田のようなパターンがちょこちょこありますね。気をつけて下さい。
他力本願を改めよ


村田 愛子
冷たい熱帯魚_05村田の妻。すごく色っぽい。それもこの女の武器だ。
実際の事件でもそうだが、ほとんどの事に関与し、遺体の処理も料理のようにやってのける。
ホントにこんな人がいたのかと信じられないが、、いたんでしょう。
夫婦やカップルで一緒になって殺人を繰り返す事件は、アメリカでは有名なものが数件ある。日本ではあまり聞きませんが、有名なのはカレー事件かな。これも保険金がらみなのでお金ですね。
相方である女の方もいい人を装い、足りない部分は色気でカバー。夫のユキオちゃんよりも妻であるこの女に、より狂気を与えた演出となっております。怖いですよ。
色仕掛けに惑わされるな


社本 妙子
冷たい熱帯魚_04社本の妻。夫の仕事を支えるいい妻のようだが、料理は全て冷凍で、○○もするし、ちょっと分からない位置づけ。義理の娘に思い切り嫌われており苦労しているが、堪えているようだ。
もう少し台詞があればよかったけれど。

場の雰囲気に流されるな


社本 美津子
冷たい熱帯魚_02社本の娘。口が悪く暴力も平気。食事中でも携帯命な今時の娘。
本作では全ての原因がこの娘にあると言ってもいいくらい。

言えるのは子供を持つということは大変だということ。
-後は何も語るまい。

足元を見て生きろ






本作はかなり流血騒ぎの非道いシーンがあるので、人に簡単には勧められない。
しかし、この実話ベースの狂気の人たちを演じたでんでん氏や黒沢あすかさん、吹越 満氏の演技がとても素晴らしく一見の価値はあると言いたい。あまりに狂気に満ちていて、とても現実とは思えないほどだ。
しかし、最後の最後に、本当のラスボスが出てくる。
ここで一気に赤い異世界から現実に引き戻され、うんざりすること間違いなし。
真の恐怖はこんな身近にあったのだ-。

ではまた


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『キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-』(2009) - Kinatay -

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闇社会の現実を見た青年。もう後には戻れない。


Kinatay_00

■ キナタイ マニラ・アンダーグラウンド - Kinatay - ■
2009年/フランス・フィリピン/110分
監督:ブリランテ・メンドーサ
原案:アルマンド・ラオ
脚本:アルマンド・ラオ
製作:ロデル・ネイシャンセノ
撮影:オデッセイ・フローレス
出演:
ココ・マルティン(ペピン)
フリオ・ディアス(ビック)
マリア・イザベル・ロペス(マドンナ)



解説:
マニラの闇社会の底知れぬ地獄の世界を垣間見ることになった青年の不安と恐怖を生々しく描いて物議を醸し、第62回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した衝撃の問題作。
 (WOWOW)

あらすじ:
子供が生まれ、正式に結婚することにした警察学校生ペピン。20歳の彼はお金が無く、式の費用も知り合いに借りなくてはいけないほどだった。
生活費の足しにするため、以前から街頭で麻薬売買の手伝いをしていた彼は、今夜ボスに会えと仲間に指示される。乗り込んだ車が停まった先はマニラの歓楽街にある怪しげな店。そこから出てきて車に乗り込んだ売春婦に、乗り合わせた男たちは殴る蹴るの暴行を始める-





Kinatay_04ペピン夫婦が住むところは、マニラにほど近い下町だ。
朝。車やバイク、自転車、屋台が行きかい、その横で洗濯する女たち。ペピンの住むアパートから玄関を出ると見えるのは、ゴミが山と積まれた集積所と、所狭しと建てられたバラックの屋根。そんな場所から結婚式をあげるため町に出る2人。
式は判事の前で誓約するだけの簡素なものだが、家族が集まり、住人たちがお祝いの声をかける。
この下町には貧困が覆いかぶさっているが、人々の心は暖かい。

Kinatay_03この作品は、そんな喧騒あふれる元気な下町の様子から始まる。
貧乏な暮らしでも、笑顔が絶えない人々。

しかし、そんな人情あふれる昼間の様子から、日が落ちるとあたりは一変する。夜のマニラはネオンが毒々しく光り、そこかしこに売春婦や麻薬の売人がたむろする。そんな中で家計の足しにと、警察学校の授業を終えて軽い気持ちで麻薬売買のバイトをするペピン。驚くのが、学校の制服なのかポロシャツの背中には「司法警察学校」の文字が。

それともう一つ驚いたのは、麻薬売買の中抜きの多さだ。
 屋台の親父が麻薬を客に
   ↓
 その代金を集める男
   ↓ 
 その代金を男たちから集めるペピン
   ↓ 
 それを集めに来る麻薬元締めの下っ端

ペピンの仕事は代金を数メートル先にいる男に渡すだけ。
一体どれだけ末端価格に乗っている事やら。麻薬売買のトップには想像もつかないほどの金が入ってくることだろう。

そしてある夜、ペピンは下っ端の男にボスに一緒に会いに行くことを指示される。
家で待つ妻子が気になるが、まぁいいか、と軽い気持ちで車に乗り込む。
乗り込んだ車には見知らぬ男たちが乗っていた-。

Kinatay_06ここからペピンの長い夜が始まる。
車に乗り込んで男たちを見た時に「しまった」と思ったことだろう。どこへ行くとも言わずに夜の街を走りだす車。不安に駆られるペピン。誰も彼には話しかけない。と、夜のネオンの中で車は停まった。
乗り込んできた女、通称マドンナ。見るからに売春婦だ。家で待つ妻とは対極の存在。車はまた走り出す。少し安心したペピンの前で、麻薬の売り上げをくすねたこの女は暴行を受け始め、テープで自由を奪われたうえ、車の床に転がされる。


こうしてペピンは車から降りることが出来なくなる。誰も自分に話しかけてこない。次は自分なのか?どこへ行くのか?この後何があるのか?何度も逃げ出すチャンスはあった。が、逃げたらどうなる・・・?よく考えろ。
車は街をぬけ、高速に乗り郊外へと進む。ネオンは無くなり、暗い道をどんどん寂しいところへ向かっていく。妻子から遠く真っ暗闇の中へ-。




Kinatay_10この作品を観る者はペピンと一緒に、暗闇の中を行き先も分からず、転がった女の後部座席に座り続けることになる。流れるネオン、行きかう車。しかし緊張のあまり何も目に入らない。神の教えを説く看板でさえしらじらしく、救ってはくれない。(注1
そして人里離れた寂しい一軒家に車が停まった時、いやな予感が当たったことに気がつく。
本当の恐怖はここから始まる。
どうして自分がここにいるのか?こんな男たちと一緒に?

本作は第62回カンヌ国際映画祭での上映時には賛否両論分かれた問題作だ。
麻薬の売り上げをくすねた女がひどい目にあうだけでは問題作とは言えない。元締めの正体が問題なのでも無い。
どちらもよくある設定ではある。
では何が?

普通の若者が「司法警察学校」と書かれたポロシャツを着て、麻薬売買に悪びれもせず手を染めている事。
そしてその若者に、そのポロシャツのまま悪事の手伝いをさせても平気な事。
そして「この仕事に早く慣れることだ」と小遣いを渡された若者には、今後も、おそらく死ぬか捕まるまで悪事の片棒をかつぐしかない人生が待っている事、だ。
これが今のフィリピンだ、と何の比喩も無くストレートに突き付けたことが衝撃的で問題だったのであろう。


夜が明け、全てが終わり、男たちの元から解放されたペピン。
しかしペピンは昨日までの彼ではない。昇った太陽はまぶしく、街の喧騒が耳に付く。
パンクしたタクシーの代わりを探すペピン。なかなかつかまらないタクシーに苛立つその表情には、不安がへばりつき早くここから逃げ出したい焦燥感でいっぱいだ。いったい彼はどこへ逃げることが出来るというのか。


タイトルの「キナタイ Kinatay」はフィリピンの言語のひとつタガログ語で「屠殺」という意味。今月からレンタルも始まっているので、ぜひ観てほしい作品です。

ではまた

(注1 フィリピンの国民90%以上がキリスト教徒であり、そのほとんどがローマカトリック。

Kinatay_21 

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『フローズン・リバー』(2008) - Frozen River -

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厚い氷の下にも川は流れる

Frozen River_00


■フローズン・リバー - Frozen River-■
2008年/アメリカ/97分
監督:コートニー・ハント
脚本:コートニー・ハント
製作:ヘザー・レイ、チップ・ホーリハン
製作総指揮:チャールズ・S・コーエン、ドナルド・ハーウッド
音楽:ピーター・ゴラブ他
撮影:リード・モラーノ
出演:
メリッサ・レオ(レイ)
ミスティ・アパーム(ライラ)
チャーリー・マクダーモット(T.J)
マイケル・オキーフ(フィナティー州警察官)
マーク・ブーン・ジュニア(ジャック・ブルーノ)

解説:
'08年のサンダンス映画祭グランプリに輝くなど多くの映画賞で絶賛された感動ヒューマン・ドラマ。これが長編初メガホンとなるコートニー・ハント監督が、自ら手掛けた短編版を劇場長編へと昇華した渾身の意欲作。現代アメリカが直面する社会問題を背景に、ふとしたことから出会った2人のシングルマザーが、それぞれに抱えた苦境を乗り越えるため密入国を手助けする違法な仕事に手を染めていくさまを、リアルな中にもエモーショナルな情感を織り込み描き出していく。主演は本作でオスカー初ノミネートを果たした「21グラム」のベテラン女優メリッサ・レオ。
(allcinema)
あらすじ:
Frozen River_01ニューヨーク州最北部、カナダ国境にほど近い小さな町。
ぼろぼろの小さなトレーラーに住む2人の息子の母親レイは、1ドルショップに2年勤め、やっとの思いで新しく大きなトレーラーの購入資金を貯めることが出来た。
クリスマスも間近になり、その新しい家が届く日の朝、ギャンブル依存症の夫トロイが資金を持って消えてしまう。夫を捜し回るレイは、ビンゴ会場で夫の車を発見するが、運転していたのは地元のモホーク族の見知らぬ女性ライラだった。
成り行きから、ライラの密入国者を運ぶ仕事を手伝う羽目になったレイ。高額な報酬に今後も続けることを決めたレイだったが-





化粧っ気の無い、ぼろぼろの疲れた肌に深く刻まれた皺-。
Frozen River_03この作品は、そんなレイの顔のアップで始まる。
タトゥーの入った痩せた足。ピンクの部屋着をだらしなく纏った姿。
裸足のままトレーラーの玄関先で煙草を吸う彼女を見て、「この映画、主役に感情移入出来るかな。」とふと思う。
がしかし、その直後、痩せた頬に涙がつたい、それをすぐに拭い去って横を向いた姿を見た時、「あ、、どうしたの。何があったの?」と思わず声をかけたくなった。
始まって早々数分で、この作品の世界に取り込まれてしまった。

Frozen River_09レイには15才と5才の2人の息子がいる。
ギャンブル依存症の夫トマスをなんとか支えて、1ドルショップで懸命に働く母親。それには夢があったからだ。広くて新しいトレーラーハウス。それを手に入れるため、化粧もそこそこに、手が荒れても気にせずに働いてきた。お金を貯めては、夫のギャンブルに消え、、が何度も繰り返されたであろう。しかしやっと貯めきることが出来た。手付けの1500ドルを入れて、家が到着するその日に残金を払う。子供達へのクリスマスプレゼントのはずだった。
なのに、よりによってその朝、夫と共にお金は消え失せた。
新しい生活が始まるはずだった、この寒い朝に。

「パパを捜さないの?」と事情が分かっている15才の息子T.J(トマス・ジュニア)が尋ねる。「探さないわよ」と答えるレイ。情けなくて涙が出る。しかしその涙はすぐに拭い去られ、また前を向く。そして探しに出かける。大事なお金を。子供達の父親を。...自分の夫を。

Frozen River_04レイが夫を捜すのにまず向かったのがカジノの一種であるビンゴ会場だ。
ビンゴゲームとは、数字が入れられた5×5のマス目の用紙を使い、発表された数字を塗りつぶす。縦、横、もしくは斜めに5マス揃えばビンゴとなり賞品を受け取るお馴染みのゲームだ。これにお金が絡むとゲームがゲームでなくなり、他のギャンブル同様、中毒の対象となる。
ビンゴ会場を経営するのが、この地の先住民族モホーク族だ。


■モホーク族と保留地
モホーク族(Mohawk、別名カニエンケハカ、Kanienkehaka(火打石の人々))とはインディアン(北アメリカの先住民族)の部族である。
モホーク刈り(モヒカン刈りとも呼ばれる)と呼ばれる独特の髪型をしていることでも知られている。
モホーク族を含む複数の部族からなる「イロコイ連邦」は、アメリカ連邦内務省の出先機関であるBIA(インディアン管理局)の傀儡である「部族政府」を設置しないことで自治権条約を固持しており、アメリカ・カナダの両連邦政府からもニューヨーク州政府からも直接権限の及ばない、インディアン部族では例外的な中立独立国家の体制を保っている。1794年のジェイ条約に始まる国際協定で、彼らはアメリカ国外とのパスポートを必要としない自由な往来を保証されている。
モホーク族アクエサスネ・バンドは連邦協定に基づき、カナダのオンタリオ州とアメリカ合衆国のニューヨーク州をまたいだ「セントリージス・モホーク族保留地」を領有している。カナダとアメリカを分けるセントローレンス川に架かる「国境交差連絡橋」は、アクエサスネ・モホーク族を記念して2000年に「三国家の交差点(Three Nations Crossing)」と命名された。



そしてこのビンゴ会場で働いていたのがモホーク族の女性ライラだった。
Frozen River_10彼女には夫がいたが、冬の凍ったセントローレンス川を車で渡っている途中で氷が割れ、車ごと沈み死んでしまった。その後、生まれた赤ん坊は義理の母親にとられてしまう。アメリカであれば裁判所に訴え出るところだが、ここは保留地。法律が違うのだ。
子供を取り返すことだけが生き甲斐のライラだったが、彼女もまたお金がない。目が悪いためカジノ会場でも思ったように仕事が出来ず、稼ぐことが出来ない。そんな中、少しの仕事で大きく稼げるのが不法移民の密入国の手伝いだったのだ。
それは、凍ったセントローレンス川を車で渡ってカナダに入り、車のトランクに不法移民を乗せアメリカに戻り、決められたモーテルまで送り届ける。1人頭1200ドル。たいがい2人セットなので、1回の仕事で2400ドルにもなる。
しかしライラには車がなかった。そこにキーが付いたまま停められていたレイの夫の車。
つい勝手に運転していたところを探していたレイに見つけられ、2人は出会うことになる。


不法移民の密入国ビジネスに手を染めた2人。
しかし警察も把握しており、監視の目は厳しい。
いつ割れるとも分からない氷の上を往復する様子は、そのまま2人の危うさを表している。川を渡りきり、岸に上がる場所さえ水浸しで、アクセルを踏み込まなければ上がれない。下手をすれば後に滑り落ちていく。
そんな危うい2人であったが、人としての、母親としての良心までもは川に捨ててはいなかった。
物語は、滑り落ちる前になんとか踏みとどまり、新しい生き方を選択した2人を捉えて終わる。




白人の女とモホーク族の女。
この地を先祖から盗んだ奴らの末裔の女と、車を盗んだ女。
金が無く困っている女と車が無くて困っている女。
ごつごつした氷がぶつかったような2人の出会いだったが、互いの話を聞くうち、少しずつ角が取れ氷は丸くなり、やがて溶けて一つになった。2人の求めているものはただ一つ。大事な子供と幸せに暮らしたい。ただそれだけだった。

分厚い氷に閉ざされたかのように見えるセントローレンス川。
だが、その下には変わらず流れるものがある。
人はその足下が崩れたとき、いつまでもそこに留まっていてはいけない。
うつむいている顔を上げ、まっすく前を見て新しい途を探すのも、また一つの生き方なのだ。

Frozen River_06 

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『アンチクライスト』(2009) - Antichrist -

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現代に蘇るダークファンタジー。支配するのは男か、女か


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■ アンチクライスト - Antichrist - ■
2009年/デンマーク・ドイツ・フランス・スウェーデン・イタリア・ポーランド/104分
監督:ラース・フォン・トリアー
脚本:ラース・フォン・トリアー
製作:ミタ・ルイーズ・フォルデイガー
製作総指揮:ペーター・ガルデ、ピーター・アールベーク・ジェンセン
撮影:アンソニー・ドッド・マントル
音楽:クリスチャン・エイネス・アンダーソン
出演:
ウィレム・デフォー(夫)
シャルロット・ゲンズブール(妻)
ストルム・アヘシェ・サルストロ(ニック)




解説:
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の鬼才L・V・トリアー監督が、息子を事故で失った夫婦の交流を衝撃的に描写。主演のC・ゲンズブールがカンヌ国際映画祭で女優賞を受賞。
基本的にたった2人しかいない登場人物をとことんまで追い詰めた衝撃作。前半は心理ドラマを思わせるが、後半はまるで暴走するかのようにホラー風サスペンスになだれ込むのが圧巻(カンヌでは気絶する観客もいたとか)。随所に見られるトリアーならではの映像美も見どころ。2人の主人公を、続くトリアー作品「メランコリア」にも出演したゲンズブールと「スパイダーマン」のW・デフォーが体当たりで熱演。
(WOWOW)

あらすじ:
ある夫婦が愛を交わしていたちょうどその時、目を離したすきに幼い息子ニックが開いていた窓から落ち死んでしまう。悲しみに打ちひしがれる夫婦。特に母親は自責の念に心を病み入院したが、一向に良くならない。それに業を煮やしたセラピストの夫は、自宅に妻を連れ帰り自ら治療を施し始める。そして妻が告白した恐怖の原因である「森」。かつて訪れたこともある山小屋のあるその森に、2人は恐怖を克服するため出発する-



この作品は、可愛い盛りの幼い息子を亡くした夫婦が、その悲しみを乗り越え、より強い絆で結ばれていく、といったような美しい物語ではない。
Antichrist_13人間に業として与えられた欲望と、それを綺麗事で飾られた現実。そんなものを全てはぎ取り、決して偽善を許さない強い決意を持って作られている作品である。
偽善をむかれて出てきたものを直視できない者には、観ることをお勧めしない。
そしてこのレビューは基本的にネタバレになりますが、全てを書いているわけではなく抽象的に表現している部分もあるので、鑑賞後にお読みになることをお勧めいたします。

それでもよろしければ、どうぞ↓下へお進み下さい。







プロローグ________
モノクロで始まる。
Antichrist_04解像力重視のハイスピードカメラが、水滴に映る光の影さえも捉える。
アリア「私を泣かせてください」(ヘンデルのオペラ「リナルド」の第2幕)の美しいソプラノに乗せて愛し合う2人は、まるでオリンポスの神々のようだ。
本作は全編に渡って美しい絵画のようなシーンが続くが、特にこのモノクロのプロローグシーンは、それだけで短編になり得るほどの美しさと説得力を持って、観る者に訴えかけてくる。

監督ラース・フォン・トリアー
LarsVonTrier
デンマークの映画監督。様々なスタイルの映画で知られ、カール・ドライヤー、とくに The Night Porter から大きな影響を受けている。
公務員であった両親は進歩主義的な左派で、無神論の立場を取っており、「感情・宗教・楽しみ」を排し、子供には規則を作らないという家庭にしていたことが人格形成に大きな影響を与えたとラースは語っている。
■主な作品
 ・キングダム(1994/TV)
 ・ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000)
 ・ドッグヴィル(2003)
 ・マンダレイ(2005)
 ・メランコリア(2011)    (Wikiより抜粋)

カール・ドライヤーに影響を受けているとあり納得。
動く絵画のようだと記事にした映画『吸血鬼』を思い出した。

  関連記事『メランコリア』(2011)



Antichrist_05雪が舞い、静謐で、ある種の神々しささえ感じられる中、その悲劇は起こる。
窓際のテーブルに置かれている「3人の乞食」の置物。
この置物を払いのけテーブルに上がった幼子は、そのまま雪の舞う外へと飛び立った。床に落ちた3体の乞食。
ここからこの作品の主役は、この乞食達となる。




第1章 悲嘆 -Grief________
幼子の葬儀から始まる第1章。
Antichrist_24葬儀に集まる親族の顔はぼかされ、ここでの登場人物は夫婦2人だけだ。
喜びも悲しみも夫婦2人だけの世界で起き、進行していく。
悲嘆に暮れる夫婦。特に母親は強い自責の念から心を病んでしまう。
薬で治療しようとする病院に不信感を抱いたセラピストの夫は、妻を家に連れ帰り、心のケアを開始する。


■悲嘆
負の感情表現のひとつ。脱力感、失望感や挫折感を伴い、胸が締め付けられるといった身体的感覚と共に、涙がでる、表情が強張る、意欲・行動力・運動力の低下などが観察される。さらに涙を流しながら言葉にならない声を発する「泣く」という行動が表れる。
最初は怒りによるその事実の否定からはじまり、自身の脳でその現実を受け止めるとともにこみ上げてくる感情である。事実を否定するほどでもない悲しみの場合は、怒りによる拒絶は発生しない。

■喪
親族を亡くした際、葬式の後に「喪に服す」期間があるのが一般的であるが、これは悲しみを克服するための期間であり、フロイトはこの期間で己がなすべきことを「悲哀の仕事」と名づけている。
悲しみを克服する期間が十分に与えられない場合、人間は抑圧状態となり、うつ病、引きこもり、不感症、多幸症などといった症状があらわれたり、それらが引き金となり、悲しみを忘れようとして他の物事に熱中し、過労になったりする等、悲しみという感情は時に怒りや憎しみ以上に感情や行動に狂いを生じさせてしまう事がある。


悲しみを克服するためにはプロセスがある。
  否定→怒り→悲しみ→回復
どのプロセスも自然な反応で、消し去ることは出来ない。
悲嘆に暮れる妻の心を少しでも早く癒そうと、自分の持てるセラピストとしての力を100%注ぐ夫。しかし、このセラピストは患者が妻であったために、いくつも大事な点を聞き逃してしまった。

●プロセスの順がおかしいと病院の医師に言われた。
夫は医師に対して臨床経験が少ないとバカにしていたために、この妻の言葉も聞き流してしまった。
大事な人を亡くした時にまず起きるのが「怒り」によるその事実の否定。
妻はこれを飛ばして「泣く」という行動をとっている。

●泣きながら夫に話した自責の念
 あの子は皆がぐっすり眠っている時間
 ベビーベッドを降り、自分でゲートを開け一人で歩き回っていた
 誰も見ていないところで

この話には矛盾点がいくつもある。どうしてぐっすり眠り見ていないのに知っていたのか?
知っていたのに、幼子が一人歩くのをそのままにしていたのか?
ベビーベッドもゲートも安全装置があるのに使わなかったのか?
一人で歩き回ることを知っていたのに?



嘆き悲しみ、事故から1ヶ月以上もたって妻は夫を責め始める
自分と子供に対して無関心すぎる。子供が死んだというのに悲しみ方が足りない、と。
ここにきてようやく妻は「怒り」を表現しだしたが、それは子供が亡くなった事への現実逃避では無い。とっくにその現実は受け止めている。では、なぜ今になって...?

夫に対する疑問点もある。
Antichrist_25妻がまだ入院していた時に夫が持ってきたブルーの花
この記事で書かせてもらったが、ブルーにはプラスとマイナスのイメージがあるが、マイナスには「憂鬱、孤独」などがあり、病室に持って行く花の色としてはあまりふさわしくないのではないか?特に心を病んでいる場合は。それをセラピストの夫が選んだことに、かなり違和感を持った。

怒りの後、身体的苦痛を伴った「苦悩」の症状が現れた妻。
 ※具体的には、めまい・口の渇き・難聴・震え・心悸亢進・吐き気など
夫はここでさらに心の奥まで探るため、妻の持つ「恐怖」の原因を探ることにする。




第2章 苦痛 -Pain(カオスが支配する)________

Antichrist_45妻の恐怖の源の一つであるに入る2人。

この森の先には夫婦で、または親子で何度か訪ねたことのある山小屋がある。2人はその場所をエデンと呼んでいる。
人里から離れた場所にひっそりと建つ山小屋。大きな木の下に建つその小屋も自然の一つと化している。

そして又ここで変なことに気がついた。
妻の服装がハイキング姿なのに対して、夫は都会の雑踏を歩くにふさわしいとも言える普通のハーフコートを羽織っている。妻のためにとことん治療する目的で入った森。これではまるでお弁当だけ食べて、すぐに都会へ帰る人のようだ。ここでもかなり違和感を感じた。


Antichrist_27森に入って数日。
妻は自然の力も借りて、だんだんと心の平静を取り戻し、夜も眠れるようになる。
しかし、反対に変な夢を見るようになり、周りの自然に怯え出す夫。
それは、死産の子をぶらさげた鹿【悲嘆】や、傷だらけの狐【苦痛】の姿となって現れる。

元気を取り戻したかのような妻は、冷静でいようとする夫に告げる。
 「自然は悪魔の教会」
 「昔、聞こえなかった死んでいくものの泣き声が聞こえる」
 「これはまだ始まりにすぎない」

そして夫は目撃する。「カオスが支配する」と話す狐を。
Antichrist_30

この場合の「カオス」とは複雑でごちゃごちゃした状態というより、ギリシア神話に登場する原初神のことではないだろうか。

カオス(古典ギリシア語:Χάος, Khaos)とは、ギリシア神話に登場する原初神である。「大口を開けた」「空(から)の空間」の意。

ヘーシオドスの『神統記』に従うと世界の始まりにあって存在した原初の神であるが、最初にカオスが存在したという意味ではない。世界(宇宙)が始まるとき、事物が存在を確保できる場所(コーラー)が必要であり、何もない「場」すなわち空隙として最初にカオスが存在し、そのなかにあって、例えば大地(ガイア)などが存在を現した。また、ヘーシオドスはカオスのことをカズム(裂け目)とも呼んでいる。

『神統記』によれば、カオスの生成に続いてガイア(大地)が生まれ、次に暗冥の地下の奥底であるタルタロスが生まれた。また、いとも美しきエロース(原愛)が生まれた。しかし、これらの原初の神々はカオスの子とはされていない。
カオスより生まれたものは、エレボス(幽冥)と暗きニュクス(夜)である。更に、ニュクスよりアイテール(高天の気)とヘーメレー(ヘーメラー・昼光)が生まれた。世界はこのようにして始まったと、ヘーシオドスはうたっている。(Wiki)



そしてこの「カオス」とは、すなわち妻ということになる。




第3章 絶望 -Despair(殺戮)________
Antichrist_32違った意味で様子がおかしくなってきた妻を心配する夫は、小屋の屋根裏で妻が論文を書くために集めていた奇妙な資料を発見する。
それは「殺戮」というタイトルの本、魔女裁判などで拷問されている女性や悪魔と魔女の挿絵、存在しない「3人の乞食」の星座の図など、目を疑うものであった。妻の論文のテーマは「悪魔的な所行を犯す人間の本質」。
男の本質が悪魔なら、全ての女性達の本質も同じ悪魔だと。
この妻の、恐怖の源の頂点は「妻自身」だと夫が悟ったとき、妻は全ての表皮を自らはぎ取り、叫ぶ。

 「私を捨てる気か!?」

全ては、この疑心暗鬼が起こしたものであったのか。
どこまでも優しい夫。しかし妻は満足していなかった。
Antichrist_37優しくしてくれる夫の偽善の下に隠れた「何か」が見え隠れする。それが我慢ならなかった。夫に足かせをし、自由を奪う妻。逃げる夫。
【苦痛】に身もだえしながら、狐の穴に逃げ込む。そこには狐に捕らえられ【絶望】に鳴くカラスが1羽。逃げた夫を口汚くののしりながら捜し回る【悲嘆】の妻。
カラスの泣き声から夫を見つけた妻は、もはやカオスではない。カオスから生まれたエレボス(幽冥)であり、ニュクス(夜)だった。





第4章 3人の乞食 -The Three Beggats________

ここに1枚の絵がある。


Pieter_Bruegel_d._Ä.
 ピーテル・ブリューゲル「足なえたち」1568年、ルーヴル美術館所蔵

本作は二肢マヒの為に歩行の手段として松葉杖を使用する者「足なえ」たちを乞食の姿で描いた作品で、5人の乞食らはそれぞれ王、司教、兵士、市民、農民という社会的階級層を暗示させる帽子を着用している。
体に精神の俗化の象徴である狐の尻尾を無数に身に着けた姿は、(一般的に社会的弱者の姿を用いて)人間が見せる偽善的行動への批判、特に聖職者の偽善や貧欲への痛烈な批判だと解釈されている。

この絵の足なえ達のように足かせをされた夫は、我に返って謝る妻に助けられるが、もはや妻の偽善の皮は破れて中が丸見えになっている。では自分はどうなのか?足かせをはずせば元通りなのか?
倒れる妻の横に姿を現す鹿、狐、カラス。これらはいつまでまとわりつくのか。
Antichrist_39





エピローグ________
全てが終わり、足を引きずりながら森を歩く夫。
道ばたの野イチゴをむさぼっていると、3人の乞食達は薄れて消えて行った。
するとエデンに向かう大勢の女達の姿が。若く美しい顔のない女達。
これは妻から解放された男の妄想なのか。
夫の偽善の皮の下に、妻は何を見つけていたのか。

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『俺たちに明日はない』(1967) - Bonnie and Clyde -

Posted by momorex on   0  0

2人は生き、そして死んだ


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■ 俺たちに明日はない - Bonnie and Clyde - ■
1967年/アメリカ/112分
監督:アーサー・ペン
脚本:デヴィッド・ニューマン、ロバート・ベントン
製作:ウォーレン・ベイティ
撮影:バーネット・ガフィ
音楽:チャールズ・ストラウス
出演:
フェイ・ダナウェイ  (ボニー・パーカー)
ウォーレン・ベイティ (クライド・バロウ)
マイケル・J・ポラード (C・W・モス)
ジーン・ハックマン  (バック・バロウ)
エステル・パーソンズ (ブランチ・バロウ)



解説:
不況時代のアメリカ30年代に実在した男女二人組の強盗、ボニーとクライドの凄絶な生きざまを描いたアメリカン・ニューシネマの先駆け的作品で、アカデミー二部門を受賞(助演女優賞エステル・パーソンズと撮影賞)。まるでスポーツを楽しむように犯罪を繰り返す二人の姿は、行いこそ異端であれ青春を謳歌する若者像そのままであり、犯罪者である事すら忘れ奇妙な共感を覚える。近年では、「ナチュラル・ボーン・キラーズ」などに代表されるアンチ・ヒーロー物のオリジナルであり、他の追随を許さぬ一つの頂点を築いた傑作である。
(allcinema)

あらすじ:
テキサスの小さな田舎町。ウェイトレスのボニーはトラック運転手相手の毎日に飽き飽きしていた。ある日、ひょんなことから刑務所を出所したばかりのクライドと出会う。出会って早々、意気投合した2人。町に出て彼女の前で軽々と強盗をやってのけたクライドに何かを感じたボニー。盗んだ車で一緒に町を逃げ出し、次々と強盗をやっては逃げる刺激的な毎日を楽しんでいたが-





経済的繁栄を謳歌していたアメリカ1920年代。
そして農作物余剰による農業恐慌が、その後の大恐慌へと一気に繋がっていった1930年代。
株の暴落により、都市部では多くの会社が倒産し就職できない者や失業者があふれ、深刻なデフレが続く。労働者や失業者による暴動が頻発するなど大きな社会的不安を招いた時代。
仕事のない若者達にとって犯罪は、すぐそこにある生活の糧の一つとも言えた。

そんな時代に出会ったボニーとクライド
それまで2人がどういう毎日を送っていたかは、本作最初のボニーを見れば分かる。
右を見ても左を見ても貧困、貧困、貧困。何もかもに嫌気がさし、ベッドの上でのたうち回るように、自分の中の時限爆弾を抑えている。

ボニーにとってクライドは、そんな生活を忘れることの出来る小粋な男。出所したところだ、と聞いた時にさえ、内心驚いたものの好奇心が優ってしまった。じゃれる子猫のように後をついて行ってしまった。

Bonnie And Clyde_01ボニー・パーカー
テキサス州ローウェナ出身、1910年生まれ。両親と兄妹の5人家族だったが、1914年に父親が死去したため、祖母の家があるダラス近郊の治安が悪いセメントシティーに引っ越す。
学校の成績もよく感想文で賞状を取ったりもしたが、逆上すると手がつけられなくなるという二面性を持つ少女だった。
16才で高校の同級生と結婚したが、その後夫は銀行強盗の容疑で刑務所に入れられる。離婚を考えたが、結局籍はそのままにクライドと1930年に出会うことになる。

クライド・バロウ
テキサス州ダラス近郊のテリコ出身、1909年生まれ。貧しい農家に、8人兄弟の6番目の子として生まれる。忙しかった両親に代わって、姉が面倒を見ていたが、親戚に預けられることもあった。
クライドは、子供の頃から動物虐待を行っている所を近所の住民に目撃されるなど粗暴なことで有名だった。両親は忙しく、躾らしい躾は受けずに成長した。17歳の頃に兄も所属していたギャングに入る。
1926年に自動車窃盗で逮捕。しかし、家族からは警察へ厄介になったことを非難されることも無く、むしろ擁護する態度をとられている。そのため、クライドは友人の家でボニーに出会うまでの4年間に、ダラス近辺で強盗を続けていた。   (Wiki)




クライドにとってボニーは、自分をまっすぐ見つめてくれる、初めて出会った人だ。ギャング仲間に対するような妙な駆け引きも必要無い。親から暖かい愛を受けた覚えが無いクライドにとって、初めての恋人であり、友人だった。





子供のゲームのように始めた強盗に、殺人が加わったとき、2人は一線を越えた。
そしてクライドの兄バック夫婦やその他の仲間も一緒になって、強盗と殺人を繰り返す凶悪な犯罪者として州をまたいで逃げ回ることになる。
禁酒法と世界恐慌の下にあったアメリカで、人々の憂さを晴らすかのような犯罪を繰り返す彼等は、次第にアンチヒーローとして認識されていく。しかし犯罪者は犯罪者。このようなアンチヒーローの末路が2人にも待っていた。

その最期を含めて、未だに語り継がれ、多くの映画、舞台、ドラマ、音楽となったこの物語は人々に何を訴えかけているのだろうか?
体制。どうにもならない現実。それらを暴力をもってしてでもぶち壊したいという「思い」と重なったのだろうか。

本作は「アメリカン・ニューシネマ」の先駆けと言われる。

アメリカン・ニューシネマ(英: New Hollywood)とは、1960年代後半 - 70年代にかけてアメリカで製作された、反体制的な人間(主に若者)の心情を綴った映画作品群を指す日本での名称。
1940年代までの黄金時代のハリウッド映画は、「観客に夢と希望を与える」ことに主眼が置かれ、英雄の一大叙事詩や、夢のような恋物語が主流でありハッピー・エンドが多くを占めていた。
1950年代以降は、スタジオ・システムの崩壊やテレビの影響などにより、ハリウッドは製作本数も産業としての規模も凋落の一途を辿り、その内容も「赤狩り」が残した爪痕などにより黄金時代には考えられなかった暗いムードをもった作品も少なからず現れた。
1960年に入り、国民はヴェトナム戦争への軍事的介入を目の当たりにすることで、自国への信頼感は音を立てて崩れた。以来、懐疑的になった国民は、アメリカの内包していた暗い矛盾点(若者の無気力化・無軌道化、人種差別、ドラッグ、エスカレートしていく暴力性など)にも目を向けることになる。
アメリカン・ニューシネマはこのような当時のアメリカの世相を投影していたと言われる。(Wiki)



アメリカン・ニューシネマ 主な作品
1967
卒業 (The Graduate)
マイク・ニコルズ監督
1968
ワイルドバンチ (The Wild Bunch)
サム・ペキンパー
1969
イージー・ライダー (Easy Rider)
デニス・ホッパー
 
明日に向かって撃て (Butch Cassidy and The Sundance Kid)
ジョージ・ロイ・ヒル
 
真夜中のカーボーイ (Midnight Cowboy)
ジョン・シュレシンジャー
1970
M★A★S★H (M*A*S*H)
ロバート・アルトマン
 
小さな巨人 (Little Big Manh)
アーサー・ペン
 
いちご白書 (The Strawberry Statement)
スチュワート・ハグマン
 
ファイブ・イージー・ピーセス (Five Easy Pieces)
ボブ・ラフェルソン
1971
フレンチ・コネクション (The French Connection)
ウィリアム・フリードキン
 
バニシング・ポイント (Vanishing Point)
リチャード・C・サラフィアン
 
ダーティーハリー (Dirty Harry)
ドン・シーゲル
1973
破壊! (Busting)
ピーター・ハイアムズ
 
スケアクロウ (Scarecrow)
ジェリー・シャッツバーグ
1975
カッコーの巣の上で (One Flew Over the Cuckoo’s Nest)
ミロス・フォアマン
1976
タクシードライバー (Taxi Driver)
マーティン・スコセッシ





強盗しては州を自由に行き来し、警察の車をまくのを楽しむ日々は終わった。
包囲網は徐々に狭まり警察との銃撃戦も増える。兄はその傷で亡くなり、兄の妻も捕まった。
1934年5月。
行方を把握されていた2人は警察の待ち伏せに遭い、ほぼ一方的な銃撃により命を落とす。
そして、この物語は終わった。
後には何も残らない。これは2人の物語だから。

Bonnie and Clyde_02

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